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猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)に対する治療薬MUTIAN(Xraphconn)のエビデンスについて

猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)に対する治療薬MUTIAN(Xraphconn)のエビデンスについて

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の皆様こんにちは。大田区の上池台動物病院の院長の上野です。今回は、FIP(猫伝染性腹膜炎)に対する治療薬MUTIAN(Xraphconn)のエビデンスについて解説をしていきます。

FIP(猫伝染性腹膜炎)は発症からの中央生存期間が9日間の、猫ちゃんにとって致死的な病気であり、今まで一度発症すると助けることの出来ない非常に恐ろしい病気でした。治療は寛解を目指すものではなく、対症療法が主に行われていました。

しかし、現在はXraphconnという薬を使用することでFIPは治すことができます。この薬はまだ未承認動物用医薬品のため簡単に手に入るものではありませんし、他の薬に比べて論文報告の数が少ないという欠点があります。しかしながら、この薬によって命を救うことができた猫ちゃんたちが、たくさんいることも事実です。

今回は、Xraphconnの有効性を示す論文を皆様にご紹介いたします。

MUTIAN(Xraphconn)について

XraphconnとはGS-441524という抗ウイルス効果を持つ成分を含んだFIPに対する治療薬のことです。今回ご紹介する論文では18頭のFIPを発症した猫にXraphconnを84日間投与し、その有効性と毒性を生存率、臨床検査値(血液検査など)、ウイルス量、抗猫コロナウイルス抗体、副作用の発生状況から評価したものです。

結論から言うと、今回の論文ではXraphconnの投与はFIPを発症した猫に対して非常に有効であり、18頭すべての猫が治療期間84日間以内に臨床的に完全に回復しました。ほとんどの猫では投与直後から熱が下がる、体重が元に戻る、血液検査所見の改善といった良好な反応が得られました。また、投与期間中の重篤な副作用は認められず投与中止になった猫もいませんでした。つまり、Xraphconnは重篤な副作用を引き起こすことなく、FIPを治すことのできる薬であると証明されました。

以下では今回の論文について詳しく説明していきたいと思います。

一般的にFIPを発症した猫の症状としては、元気食欲消失、発熱、神経症状、腹水・胸水貯留があります。また、血液検査所見ではTP(総蛋白)、グロブリン、ビリルビン濃度、SAA(炎症の値)が上昇し、アルブミン、ヘマトクリット(貧血の値)、リンパ球数は減少します。

検査方法と結果について

はじめに検証方法についてです。84日間のXraphconn経口投与(空腹時)を行い、定期的に身体検査、超音波検査、血液検査、血中ウイルス量、血清抗猫コロナウイルス抗体を測定し治療効果の評価を行いました。

治療結果としましては、すべての猫が84日以内に臨床的に完全に回復し、再発もなく、上記の全ての評価項目において有意な改善が認められました。具体的には、体重が元に戻り、体温が平熱まで下がり、腹水・胸水の量が減少しました。また血液検査所見では、ヘマトクリット、ビリルビン濃度、TP、アルブミン値、グロブリン値、SAAが改善しました。

ほとんどの猫(15/18頭)で治療前に血液中にウイルスRNA(遺伝子)が検出されていましたが、治療開始後2~4日目までに大幅に減少し、14日目には検出されなくなりました。

治療開始前はほとんどの猫の血清抗猫コロナウイルス抗体がかなり高い値を示していましたが、治療開始後には値が低下し、どの猫も値が上昇することはありませんでした。

副作用に関して

次に副作用についてです。投与期間中に投薬を断念するような、重篤な副作用はありませんでしたが、血液検査所見上でいくつかの副作用が報告されています。多くの猫に認められたのはリンパ球増加症、好酸球増加症、肝数値の上昇でした。

他に貧血やリンパ球減少症が報告されています。いずれの副作用も対症療法で対処できる程度のものでした。

Xraphconnは注射薬もあり、状態が悪く投薬が困難な場合や、消化器官が正常でなく薬をうまく吸収できない場合には皮下注射を行うこともできます。しかし、別の論文では注射部位反応(疼痛反応、表在性皮膚病変、皮膚潰瘍など)を起こすことがしばしばあると報告されています。

その他の副作用や重症例に関して

最後に、今回の論文ではXraphconnのFIPに対する有効性が明らかとなりましたが、他の報告では治療に反応しない症例やその他の副作用(消化器症状、立ち耳が垂れ耳になってしまうなど)も報告されています。

そのため、今回の論文の報告だけでなく様々な情報を慎重に収集する必要があります。ただ、冒頭でも申し上げた通りFIPは非常に進行の早い致死的な病気です。病気が進行し重度の黄疸が生じてしまった症例や、長期間にわたり体温が正常に保てない症例では治療を行なっても助けてあげられないことがあります。だからこそFIPを治すには早期診断、早期の治療介入が最も重要なのです。

幼い猫ちゃんの命を奪ってしまうこの病気は現在治せる病気へと変わってきています。飼っている猫ちゃんに少しでもいつもと違う様子があればご相談下さい。

本院のホームページにFIPの初期症状・診断方法・治療方法をまとめたページと、実際の症例での治療報告を載せているページがございますので、そちらも是非ご覧ください。

ご不明点がございましたら、お気軽にお電話ください。

参考:
Curing Cats with Feline Infectious Peritonitis
with an Oral Multi-Component Drug Containing GS-441524



当院でのFIPの診断・治療に関しては
こちらを参照の上ご相談下さい。


ラインでの無料相談も行なっています。
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