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猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)(FIP)の発症確率について|獣医師が解説

猫伝染性腹膜炎(FIP)はウイルス感染により引き起こされる猫の病気です。一度発症すると治療は難しく、多くの猫ちゃんが数ヶ月以内に亡くなってしまいます。今回は猫伝染性腹膜炎(FIP)について、発症率に焦点を当てて解説していきます。


猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因ウイルス
猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症には、猫腸コロナウイルス、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスといった2種類のウイルスが関与しています。

猫腸コロナウイルス
猫腸コロナウイルスは猫の腸管上皮細胞で増殖します。ほとんど病原性がないか、あるいは軽い下痢を引き起こす程度で、比較的病原性は低めです。感染猫の便などから環境中にウイルスが排出されます。世界中の飼い猫に広まっており、多頭飼育の環境では感染率が高いと言われており、多頭飼育の猫の35-70%が糞便中に猫腸コロナウイルスを排泄しているとの報告もあります。猫腸コロナウイルスが猫ちゃんの体内で突然変異すると、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスが発生します。

猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルス
猫伝染性腹膜炎(FIP)の直接の原因となるウイルスです。病原性は非常に強く、感染が成立し猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症すると、ほぼ100%の猫が死に至ります。猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスは猫腸コロナウイルスの遺伝子の「3c」と呼ばれる部分の遺伝子が欠失することで生じるとの報告があります。「3c」は腸での増殖に必要な遺伝子であるため、猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスは腸管内で増殖することができず、そのため便中にも排出されません。

猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスを発症する仕組み
猫が猫伝染腹膜炎を発症する過程では、単にウイルスに感染するだけでなく、さまざまな要因が関与しています。猫伝染性腹膜炎(FIP)が発症するためには次のようなステップが必要になります。

⑴ 猫腸コロナウイルスに感染する。
猫腸コロナウイルス感染猫の糞便や尿、唾液などから排出されたウイルスを口や鼻から取り込むことで感染します。

⑵ 猫腸コロナウイルスが腸の細胞で増殖する。
軽度の下痢などの症状を引き起こします。

⑶ 免疫力が低下する要因が加わる。
集団飼育や生活環境の変化などのストレス、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスの感染などが要因として考えられます。

⑷ 猫腸コロナウイルスが猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスに変異し、血中に入り込む。
ウイルスが変異しても免疫により排除されることがありますが、免疫抑制を受けている猫の場合は免疫がうまく機能せず、変異ウイルスが発生し、それが血中に入り込んで全身に回ってしまいます。

猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症する確率は?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率は、猫腸コロナウイルスに感染している猫の中でも数%と言われています。そのため、猫全体で見れば、発症率はさらに低いと考えていいでしょう。しかし、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症には、非常に多くの要因が関連しているため、一概には言えません。猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率を上げる要因としては、次のようなものが挙げられます。

多頭飼育
多頭飼育は猫にとって大きなストレス要因となります。ブリーディング施設やキャッテリー、多頭飼育家庭ではストレスによる猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率が高まります。

若齢
猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率は若い猫で比較的高めです。特に、2歳齢未満が55-67%を占めているという報告もあります。

猫エイズウイルス、猫白血病ウイルス感染猫
猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスに感染している猫は免疫が抑制されているため、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率が高まります。猫白血病ウイルスの感染は混合ワクチンの接種で予防することができます。

純血種
特定の純血種の猫で発症率が高いとの報告があります。発症が多い品種としては、アビシニアン、ベンガル、ブリティッシュショートヘアー、ヒマラヤン、ラグドール、レックス、デボンレックスなどが報告されています。

雄猫
雌猫と比べて雄猫での発症率が高いとの報告もあります。特に、未去勢猫で多いようです。

猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症する可能性を減らすためにはどうしたらいい?
ここまでで猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症するメカニズムや発症リスクを高める要因について説明してきました。では、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率を下げるためにはどのような対策をしていけばいいのでしょうか?具体的な対策としては、次のようなものが挙げられます。

室内飼育を徹底する
今ではかなり少なくなりましたが、まだ飼い猫が家の中と外を自由に出入りできるようにしている家庭もあるかと思います。猫伝染性腹膜炎(FIP)だけでなく、あらゆる感染症を予防する観点から、完全室内飼育をお勧めします。理由としては主に下記の3つが挙げられます。
⑴ 猫腸コロナウイルスの感染予防
猫腸コロナウイルスはすでに猫腸コロナウイルスに感染している猫からの排出物との接触で感染します。飼育を開始した段階ですでに猫腸コロナウイルスに感染してしまっていることも多いですが、まだ感染を受けていない場合は外にいる感染猫との接触を防ぐことでほぼ完全な予防が可能です。
⑵ 猫エイズウイルス、猫白血病ウイルスの感染予防
猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスの感染は猫の免疫力を低下させるため、猫腸コロナウイルスから変異した猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスが発生してしまう要因になります。猫エイズウイルスは猫同士のケンカ、猫白血病ウイルスは猫同士のケンカや唾液のやりとりなどで伝染します。野良猫では感染率が高いため、室内飼育を徹底し野良猫との接触を避けることが大切です。
⑶ ストレスの低減
外で他の猫との縄張り争いやケンカなどに遭遇すると、猫は強いストレスを感じます。ストレスは免疫力を低下させ、猫伝染性腹膜炎(FIP)が発症する可能性を高めます。

多頭飼育を避ける
上述した通り、多頭飼育により猫は強いストレスを感じるため、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症要因になります。そのため、すでに多頭飼育している場合はしょうがないですが、今後飼育頭数を増やして多頭飼育にしていくのは控えた方がいいでしょう。

混合ワクチンの接種
残念ながら、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症を予防できる効果的なワクチンは日本には存在しません。しかし、発症要因となる猫白血病は混合ワクチンによる予防が可能です。混合ワクチンは猫風邪の原因となる感染症も予防できるため、猫風邪による体力の低下も防げます。
去勢手術
未去勢猫で猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症リスクは高まります。はやめに去勢手術を実施しておくといいでしょう。しかし、すでに猫腸コロナウイルスの感染を受けている場合、まれに去勢手術のストレスにより猫伝染性腹膜炎(FIP)が発症してしまうこともあるため注意が必要です。もし心配であれば猫コロナウイルスの抗体価検査を受け、抗体価の上昇が見られる場合には抗体価が下がるまで手術の実施を待った方がいいでしょう。

ストレス要因を減らす
ストレスを減らすことは免疫力を維持するためにとても重要です。ストレスのない飼育環境を目指すためには、次のような点を意識するといいでしょう。
⑴ 猫の性質にあった家具を用意する
猫は高いところから見下ろしたり、狭いところに隠れたりする性質があります。そのような欲求を満たしてあげられるように、キャットタワーなどの家具を用意してあげるといいでしょう。
⑵ よく遊ぶ
ねこじゃらしなどを利用して、猫の性質にあった遊びをしてあげましょう。
⑶ トイレ環境を見直す
猫はトイレに関してストレスを感じやすい動物です。トイレの数は飼育頭数+1以上用意し、それぞれを常に清潔に保ちましょう。

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