「犬の乳腺腫瘍は命にかかわる?」
「手術しないとダメ?」
このようにお考えの方もいるでしょう。
この記事では、犬の乳腺腫瘍とは何かや、予防・治療の方法について解説しています。
最後まで読めば犬の乳腺腫瘍について理解が深まり、適切な対処ができるようになるでしょう。
なお当院には、犬の乳腺腫瘍において数多くの治療実績があります。犬の乳腺腫瘍は早期治療が重要なので、まずは愛犬の状態について教えてください。
当院の腫瘍治療について
目次
犬の乳腺腫瘍とは?未避妊の雌で多く発生する腫瘍
乳腺腫瘍は、未避妊雌で多く発生する腫瘍であり、その起源は乳腺(アポクリン腺から派生した分泌腺)です。
腹部の乳腺のある部位に発生し、初期の段階では小さな硬いしこりとして触ることができ、赤みや出血を伴うこともあります。
以下の動画では、当院で実際にあった乳腺腫瘍の症例や治療についてご紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
※当該部分(9:42~)から再生されます
犬の乳腺腫瘍には良性と悪性がある
犬の乳腺腫瘍には良性と悪性が存在し、それらは細胞診検査や病理検査を実施して判定を行います。
一般的に、犬の乳腺腫瘍は50%が良性で、50%が悪性とされています。さらに悪性腫瘍だった場合、その半数が転移すると言われています。
前述の検査でしか良性、悪性の判断ができないため、見た目のみで良悪を判断することはできません。
良性の乳腺腫瘍の特徴・症状
見た目的には通常の皮膚と変わらず、触ると米粒から小豆大の硬いしこりが皮膚のすぐ下に確認できます。
しこりができている以外に、身体的な異常は見られないことが多いです。
▼関連記事
犬の乳腺腫瘍は良性でも大きくなる?急に大きくなった場合の対応も
悪性の乳腺腫瘍の特徴・症状
悪性腫瘍についても、最初は良性腫瘍と同様に小さいしこりから成長していきますが、大きくなるスピードが早かったり、しこりの中心や周囲が破れたりして、より激しい様相となります。
ただし、必ずしも上述のような特徴が見られるわけではないので、見た目が酷くないからといって安心できるものではありません。
犬の乳腺腫瘍が良性か悪性かを調べる方法
良性、悪性の最終的な確定には、病理組織検査を実施しますが、この検査は組織を摘出しない限り実施できません。
このため、腫瘍の特徴や他の検査方法からある程度の予測を行います。
具体的には、腫瘍の大きさ、成長速度、自壊の有無(破けているか)、細胞診検査などを実施することで評価します。
当院の腫瘍治療について
犬に乳腺腫瘍ができる原因は?避妊を実施していないと発生しやすい
主な乳腺腫瘍の原因は、乳腺の細胞が雌性ホルモンに晒されることです。早期の避妊をすることで、リスクが低下することがわかっています。
体内からのホルモン以外にも、一部のホルモン製剤の使用がリスクを上昇させるという報告もあります。他には、肥満などもリスク因子として報告されています。
犬の乳腺腫瘍は予防できる?避妊手術が推奨される
避妊手術を早期に実施することで、乳腺腫瘍の発生リスクを低減できることがわかっています。
具体的には、初回発情前に避妊手術を実施すると発生率0.05%、初回から2回目の発情までであれば発生率8%、2回目以降であれば発生率26%といわれています。
犬の乳腺腫瘍は転移する?悪性の場合は可能性が高い
乳腺腫瘍の中で、悪性腫瘍のうちの半数が転移するといわれています。まず、腫瘍に近い部分のリンパ節に転移し、その後は肺や腹腔内へと転移します。
犬の乳腺腫瘍を治療する方法は?外科手術による切除が第一選択
犬の乳腺腫瘍に対して、第一選択は外科手術での摘出です。摘出方法についてはいくつかの選択肢があり、腫瘍のみ切除、罹患乳腺のみ切除、領域乳腺切除、片側または両側全摘出などが挙げられます。
それぞれの手術方式によりメリット・デメリットがあるので、犬種、年齢、腫瘍の悪性度や発生数、その他状況を総合的に判断して決定します。
当院の腫瘍治療について
犬の乳腺腫瘍を切除した後は?
術後は、特に転移の危険性などが少なければ、通常通りの生活をして定期的な経過観察を行います。
ご自宅では、特に未切除の部分の乳腺領域にしこりができていないかを触って確認してください。
併せて数ヶ月に一度病院を受診していただいてチェックをすることをお勧めします。
犬の乳腺腫瘍は根治できる?転移していなければ可能
早期に手術で摘出を行えば、転移や悪性転化のリスクを減らし根治することが可能です。
逆に長期放置した場合には、転移により手術不適応となったり、悪性転化により急激に悪化したりして根治が難しくなります。
犬の乳腺腫瘍の手術費用
手術費、麻酔代、入院費等については、切除する領域の大きさや本人の状態などにより大きく異なりますので、直接担当医にお尋ねください。
当院の腫瘍治療について
犬の乳腺腫瘍に関するよくある質問
犬の乳腺腫瘍に関するよくある質問に対し、獣医師が回答します。
犬の乳腺腫瘍とは、いわゆる乳がんですか?
乳がんは、乳腺の悪性腫瘍のみを指す言葉です。犬の乳腺腫瘍には良性のものもあるので、厳密には乳がんとイコールにはなりません。
乳腺腫瘍になりやすい犬種はありますか?
小型犬種では、
- プードル
- チワワ
- ダックスフンド
- ヨークシャー・テリア
- マルチーズ
- コッカースパニエル
大型犬では、
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セッター
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
などが挙げられます。
犬の乳腺腫瘍は手術しない選択肢もありますか?
何かしらの理由で手術が困難でない限りは、早期に手術を実施することをお勧めします。
犬の乳腺腫瘍は良性でも手術した方がよいですか?
犬の乳腺腫瘍は、良性でも放置すると悪性転化してしまう可能性が増すので、早期に手術をすべきと考えます。
悪性の乳腺腫瘍は命にかかわりますか?
基本的に悪性腫瘍の方が、命に関わる確率は高くなります。
悪性腫瘍のタイプにより、術後長期の生存が見込めるものもあれば、予後の悪いものも存在します。
犬の乳腺腫瘍の手術は保険適用となりますか?
基本的には、治療のための費用になりますので保険対象ですが、詳しくはご利用の保険会社様にお問い合わせください。
犬の乳腺腫瘍は手術しても再発しますか?再発率はどれくらいですか?
術式により、乳腺組織が残存する方法であれば、再発の可能性はあります。
腫瘍切除後に残存している乳腺に転移や再発が認められた症例は約6割程度という報告があります。
高齢の犬でも乳腺腫瘍の手術は行えますか?
術前の検査をしっかりと実施した上で手術を実施すれば、高齢でも手術は可能です。
放置することでサイズが大きくなってしまったり、固着が激しくなったりすると、更にリスクが増します。
術前検査に問題がなく健康状態も良好であれば、早めに手術をするのが望ましいです。結果的にはリスクを下げることにも繋がります。
【まとめ】犬の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が大切
犬の乳腺腫瘍は50%が良性で、50%が悪性とされています。悪性の場合、命にもかかわるため早期の治療が望ましいです。
また、ご自身で良性・悪性を見分けるのは難しいため、少しでも気になることがあれば獣医による診察を受けましょう。
当院には、犬の乳腺腫瘍において数多くの治療実績があります。犬の乳腺腫瘍は早期治療が重要なので、まずは愛犬の状態について教えてください。
当院の腫瘍治療について