犬の皮膚型リンパ腫は比較的稀な病気であるものの、一般的な皮膚疾患との見分けがつきにくいのが特徴です。無治療の場合の余命は3ヶ月以内とされており、非常に恐ろしい病気といえます。
この記事では、犬の皮膚型リンパ腫とはどのような病気かを詳しく解説します。
犬の皮膚型リンパ腫は、診断が非常に難しい病気です。そしてもっとも怖いのは、別の疾患だと誤認し、適切な治療を施さないことです。少しでも不安がある場合は、腫瘍専門医が在籍する当院までご相談ください。 |
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この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
-
▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
犬の皮膚型リンパ腫とは?

犬の皮膚型リンパ腫とは、皮膚に紅斑、びらん・潰瘍、鱗屑(フケ)などの症状が出るリンパ腫です。体幹部に症状が認められることがもっとも多く、半分くらいの症例で痒みを伴います。アレルギーに似た症状のため、アトピーや食物アレルギーとの鑑別に注意が必要です。
犬のリンパ腫の中で3番目に発生頻度が高い病型(3〜8%)ですが、比較的稀な病気です。犬の皮膚腫瘍全体で見ると、1%がこの腫瘍に該当します。
予後は数ヶ月から2年程度と、非常に幅広く報告があります。病変の位置、個数、皮膚病変なのか粘膜病変なのかなど、個体によって大きく寿命が異なります。
犬のリンパ腫とはどのような病気か?についてはこちら
犬の皮膚型リンパ腫の初期症状

犬の皮膚型リンパ腫の初期症状として、以下が認められます。
- 体幹部やお腹の皮膚病変
- 鼻、口、肛門などでの粘膜病変
- フケ
- 赤み
- 潰瘍
- びらん
- 結節(しこりのような腫瘤)
- 脱毛
- 痒み
- 痛み
- 違和感
- 色素脱
など
犬の皮膚型リンパ腫の末期症状

犬の皮膚型リンパ腫の末期症状として、以下が認められます。
- 全身のリンパ節への転移
- 肝臓、脾臓などの各臓器への転移
- セザリー症候群(白血病に近い状態に進行すること)
リンパ腫になった犬の余命についてはこちら
犬のリンパ腫が治った事例はある?についてはこちら
犬の皮膚型リンパ腫と間違えやすい疾患

犬の皮膚型リンパ腫は、以下のような疾患と間違えられやすいです。
- 皮膚病
- アレルギー(アトピー、食べ物)
- 膿皮症(ブドウ球菌)
- 寄生虫(ノミ、ダニ)
- 免疫介在性
- 反応性肉芽腫
など
一般的な皮膚疾患との見分けがつきにくいことが、犬の皮膚型リンパ腫の難しいところです。初期の皮膚病変を見つけてからリンパ腫と診断されるまでに平均5ヶ月かかるといったデータがあるほど、症状は似ています。
皮膚型リンパ腫と症状が被る疾患は多くあり、ステロイドやアポキル(痒み止め)といった薬に対する治療反応も似ているため、判断は非常に難しいです。大切なのは、年齢や症状、治療反応、検査結果(スタンプ検査、生検)といった全ての情報から総合的に診断することです。
また、症状と治療反応によっては積極的な生検検査をする必要があります。
皮膚型リンパ腫になった犬の余命

皮膚型リンパ腫になった犬の余命は、無治療だと3ヶ月以内とされています。
以下のような治療を行った場合は、数ヶ月から2年程度の余命が見込まれます。
- 抗がん剤
- レチノイド(ビタミンA)
- アポキル(オクラシチニブ)
犬の皮膚型リンパ腫の原因

犬の皮膚型リンパ腫の原因に関しては、未だに多くのことがわかっていません。一般的には、皮膚に常在するリンパ球サブセットの腫瘍化と考えられています。
犬の皮膚型リンパ腫の診断方法

犬が皮膚型リンパ腫を発症しているかどうかを調べるためには、臨床症状と細胞診、もしくは病理組織学的検査を行い診断を行います。
症状のある部分を針で刺して細胞を取る方法や、症状のある皮膚や結節(しこりのような腫瘤)をくり抜いて病理検査を行う方法があります。
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犬の皮膚型リンパ腫の治療方法

犬の皮膚型リンパ腫では、以下のような治療が選択されます。
- 抗がん剤
- レチノイド(ビタミンA)
- ステロイド
抗がん剤
ロムスチン(ニムスチン)単体、もしくはVELCAP-ELと呼ばれる複数の抗がん剤を組み合わせた方法を用います。
ロムスチン(ニムスチン) | 3週間に1回の飲み薬(静脈注射)の抗がん剤。副作用(骨髄抑制)が強く出る場合があるので注意が必要。多くの皮膚リンパ腫に有効とされている。 |
---|---|
VELCAP-EL | 複数の抗がん剤を組み合わせてリンパ腫を多角的に抑える方法。複数の抗がん剤を使うためプロトコルが複雑。その分、ロムスチン単剤よりも効果が期待できる反面、重篤な副作用が起きる可能性もある。 |
犬のリンパ腫治療に使う抗がん剤の費用目安についてはこちら
レチノイド(ビタミンA)
作用機序が完全には分かっていませんが、抗がん剤に匹敵するくらい生存期間を有意に延長することがわかっています。副作用が少ないことが特徴です。
効果発現までは2週間ほどかかります。
ステロイド
他の治療と併用して飲むことが多いです。ステロイド単剤でも腫瘍を抑える効果が報告されています。
犬のリンパ腫に対するステロイドの効果についてはこちら
当院における犬の皮膚型リンパ腫の症例

当院における犬の皮膚型リンパ腫の症例を紹介します。
症状
- 皮膚:体幹部のフケ、脱毛、結節
- 粘膜:口腔潰瘍、鼻の色素脱、肛門の紅斑
検査
- FNA(細胞診)
- 皮膚生検(病理検査)
治療
ステロイドとレチノイド製の内服。症状に合わせてL-アスパラギナーゼ(抗がん剤)の注射(ステロイドの副作用を見つつ用量の抑制およびアポキルへの変更)。
治療反応
痒みと皮膚病変の消失、もしくは改善が認められている。
犬の皮膚型リンパ腫を未然に防ぐには

犬の皮膚型リンパ腫を未然に防ぐためには、何かしら皮膚の症状が出た際にかかりつけの病院でよく見てもらうことが大切です。犬の皮膚型リンパ腫は他の疾患とも症状が共通するため、自己判断は禁物です。
症状や治療反応によっては、積極的な検査が必要なときもあります。その際、検査を躊躇わないことも重要です。
「これって皮膚型リンパ腫じゃないかな?」「一応、診てもらったほうがいいかな?」と思う場合は、ぜひ当院にご相談ください。当院には腫瘍専門医が在籍しているため、正確な診断と治療判断が可能です。
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