猫のリンパ腫におけるステージ分類は、治療の成功率や猫の生活の質に大きく関わります。愛猫の状態を正しく知るためにも、飼い主もしっかりと内容を理解しておくことが大切です。
この記事では、猫のリンパ腫におけるステージについて解説します。
猫のリンパ腫を適切に治療するには、正確なステージ分類を早期の段階で実施することが欠かせません。リンパ腫に関して不安に思うことがあれば、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績がある当院にご相談ください。 |
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この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
-
▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
猫のリンパ腫におけるステージとは

猫のリンパ腫の「ステージ」は、簡単に言うとがんが体のどこまで進んでいるのか、つまり進行の度合いを表しています。人間のがんでも広く用いられており、「ステージ1〜4(または5)」などと段階的に示されることが一般的です。
猫のリンパ腫においても、ステージ分類を参考にすることで、がんがどこに発生しているかや他の臓器への広がりがあるかなどがわかります。
猫のリンパ腫とはどのような病気か?についてはこちら
猫のリンパ腫のステージ分類

猫のリンパ腫は、一般的にI〜Vの5段階に分類されます。それぞれのステージについて、詳しく見ていきましょう。
ステージI
ステージIは、1か所のリンパ節、または1つのリンパ系の臓器(胸腺、脾臓など)にだけ腫瘍が確認される状態です。初期段階とされ、発見が早ければ治療の選択肢も広く、寛解(症状が抑え込まれた状態)が十分に期待できるステージです。
治療は抗がん剤による化学療法が基本ですが、外科切除が可能な場合は手術も選択されることがあります。
猫のリンパ腫の良性についてはこちら
ステージII
ステージIIは、2つ以上のリンパ節にがんが認められるものの、体の同じ側(たとえば腹部側に2つなど)に限定されている状態です。まだ局所的な広がりにとどまっており、寛解の可能性は十分あります。
治療は化学療法が中心になります。
ステージIII
ステージIIIは、体の両側にまたがるリンパ節に腫瘍が確認される状態です。この場合、多剤併用の化学療法(CHOPプロトコルなど)が第一選択です。
寛解可能なケースも多いですが、治療反応や期間は個体差が大きいです。
猫のリンパ腫治療に使われる抗がん剤の効果についてはこちら
ステージIV
ステージIVは、リンパ系以外の臓器、特に肝臓や脾臓に腫瘍細胞が波及している状態です。この場合、多剤併用の化学療法に加えて、臓器機能をサポートする対症療法も重要であり、輸液や栄養管理などを行うこともあります。
完全寛解は難しい場合もありますが、部分寛解や生活の質を維持した延命は十分可能です。
悪性リンパ腫になった猫は長生きできる?についてはこちら
ステージV
ステージVは、がんが骨髄や脳・脊髄といった中枢神経系にまで広がった状態です。
最重度のステージで、症状も重く、治療への反応も個体差が大きくなります。貧血や神経症状が現れることがあります。
治療は高度な化学療法や中枢神経に届く薬剤(ロムスチンなど)の投与に加え、緩和ケア(QOL向上のための支持療法)も併用されます。
完全寛解の可能性は低めであり、苦痛を和らげできるだけ快適な日常を送れるよう支援することが治療の中心になります。
猫のリンパ腫に対する緩和ケアについてはこちら
猫のリンパ腫におけるサブステージ

猫のリンパ腫におけるサブステージとは、腫瘍が体にどれだけ広がっているか(前述の「ステージ」)ではなく、現在の体調や症状の有無に注目した分類です。
同じステージの猫でも、「症状があるかどうか」によって治療の選択肢や予後が変わるため、このサブステージの評価が非常に重要です。
サブステージa
サブステージaとは、腫瘍が見つかってはいるものの、猫自身に目立った全身症状が出ていない状態を指します。たとえば、食欲や元気があり、日常生活に支障がないようなケースです。
猫のリンパ腫は見た目にわかりにくいことも多いため、症状がない=軽症というわけではありません。しかしそれでも、治療の開始時点で症状がないことは、治療成績の面でも有利とされています。
猫のリンパ腫の初期症状についてはこちら
サブステージb
サブステージbは、腫瘍に関連する全身症状がすでに現れている状態を指します。具体的には、以下のような症状が認められる状態です。
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐・下痢
- 元気消失
- 発熱
- 呼吸困難
ステージが同じでも、サブステージbの方が治療の難易度が高く、予後もやや不良とされます。
ただしサブステージbの猫でも、適切な治療によって症状が軽減し、サブステージaのような状態に回復するケースも珍しくありません。そのため、できるだけ早い段階での治療開始が大切です。
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猫のリンパ腫のステージを診断する方法

猫のリンパ腫のステージは、以下のように診断していきます。
1.血液検査
まず行われるのが血液検査です。血液検査は、貧血や白血球の異常、臓器機能の状態などを確認し、全身の健康状態を把握するために役立ちます。特に骨髄への浸潤が疑われる場合には、重要な手がかりとなります。
2.画像検査
次に、胸部X線や腹部超音波検査などの画像検査を行い、リンパ節の腫れや肝臓・脾臓への腫瘍の波及がないかを調べます。これにより、腫瘍の広がり具合を可視化することができます。
3.細胞診や生検
腫瘍の診断を確定するためには、細い針を使って腫れているリンパ節や臓器から細胞を採取する「細胞診」や、必要に応じて「生検」が行われます。これによりリンパ腫かどうか、どのタイプかを判断します。
4.骨髄検査・CT検査
さらに、がんが骨髄まで達しているかを調べるために骨髄検査を行うこともあります。骨髄検査はステージVの評価に欠かせない検査です。
場合によっては、CT検査で中枢神経や難解な部位の詳細な画像診断を行うこともあります。
このように、猫のリンパ腫のステージ診断は、血液検査、画像診断、細胞診・生検、必要に応じた骨髄検査やCT検査を組み合わせて行われます。正確なステージ分類は、治療の成功率や猫の生活の質に大きく関わるため、初期段階での丁寧な検査が非常に重要です。
まとめ

猫のリンパ腫のステージをまとめると、以下の通りです。
ステージ | 定義 |
---|---|
I | 1か所のリンパ節、または1つのリンパ系の臓器(胸腺、脾臓など)にだけ腫瘍が確認される状態 |
II | 体の両側にまたがるリンパ節に腫瘍が確認される状態 |
III | 体の両側にまたがるリンパ節に腫瘍が確認される状態 |
IV | がんが骨髄や脳・脊髄といった中枢神経系にまで広がった状態 |
V | がんが骨髄や脳・脊髄といった中枢神経系にまで広がった状態 |
サブステージ | 定義 |
---|---|
a | 腫瘍が見つかってはいるものの、猫自身に目立った全身症状が出ていない状態 |
b | 腫瘍に関連する全身症状がすでに現れている状態 |
ステージ次第で、治療の選択肢は大きく変わってきます。上記のステージを初期段階で正確に分類することが、治療成功のカギです。
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