「犬の肝臓腫瘍が消えた」と感じるケースがありますが、実際に腫瘍が自然に消えることはほとんどありません。肝臓腫瘍の中には、進行が緩やかで長期間無症状のまま経過するタイプもあります。

この記事では、「犬の肝臓腫瘍が消えた」と感じる理由や、手術での完治について詳しく解説します。

この記事の監修者

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

監修者情報

▼略歴

• 麻布大学　獣医学科卒業（学業成績優秀者）
• 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
• 神奈川県　外科認定医・整形専門病院にて勤務医
• 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
• 日本小動物がんセンター　研修医

▼所属学会・資格

• 日本獣医がん学会
• 日本獣医画像診断学会
• 日本小動物歯科研究会
• 日本獣医麻酔外科学会
• 日本獣医循環器学会
• 日本獣医皮膚科学会
• 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
• ヒルズ栄養学コース修了
• Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
• 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
• 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4

犬の肝臓腫瘍が「自然に消えた」はあり得るのか？

肝臓腫瘍と診断がついていて、その腫瘍が自然に消えることはありません。腫瘍化した細胞が元に戻ることはないからです。

ただし、その腫瘍の悪性度が高くない場合や、悪性度が高くても腫瘍の種類によっては、無症状のまま生活を送れることはありえます。

犬の肝臓腫瘍は手術すれば「消えた」となる？

犬の肝臓腫瘍の多くを占める肝細胞癌であれば、適切な手術で摘出を行えば再発することなく完治の状態（消えた状態）に持ち込むことは可能です。臨床症状が出ており、かなり大きな腫瘍の場合でも、場所によっては完全に切除が可能になります。

しかし、肝細胞癌でも手術では取り切れない場所に発生している場合や、他の高悪性度の腫瘍であった場合には完治させることは難しいです。

犬の肝臓腫瘍は無症状でも「消えた」と判断すべきではない

肝臓は人間でも沈黙の臓器と呼ばれているように、悪性腫瘍があったとしても初期の段階や腫瘍のサイズ、場所によっては臨床症状を示さないことはよくあります。腹部膨満のように見た目が変化する特殊なケースを除き、外見から肝臓腫瘍の存在を判断することは難しいと言えます。

腫瘍が大きくなり、手術で完治させることができない状態になって、ようやく見つかることも少なくありません。

そのため治療前でも治療後でも、臨床症状だけで判断するのではなく、定期的な血液検査や画像検査などが重要です。

万が一腫瘍が見つかった場合には、今までの既往歴やサイズ、進行スピード、転移の有無などのさまざまな情報から治療方針を決定します。早期発見・早期治療ができれば、命の危険から愛犬を守れる可能性はあります。

まとめ

犬の肝臓腫瘍が自然に「消えた」ように見えることはあっても、実際に腫瘍細胞が消失することはありません。症状が落ち着いている場合でも、実は腫瘍の状態はどんどん悪化している可能性もあります。

一方で、犬の肝臓腫瘍の多くを占める肝細胞癌は、再発なく完治（消えた状態）を目指すことが可能です。そのため、定期的な血液検査・エコー・CT検査などによる早期発見と適切な治療判断が非常に重要です。

「肝臓腫瘍が消えたかもしれない」と感じる場合でも、自己判断せずに獣医師の診察を受け、画像や数値の変化を正確に確認することが、愛犬の命を守る第一歩となります。

愛犬の腫瘍に関して不安に思うことがあれば、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績がある当院にご相談ください。