犬の肝臓病は、初期ではほとんど症状が見られず、気づいたときには重い段階まで進行していることもあります。
ここでは、代表的な犬の肝臓病の特徴をわかりやすくまとめ、早期発見・早期対応の参考になる情報を解説します。
目次
犬の代表的な肝臓病

犬の代表的な肝臓病として、以下のような病気が挙げられます。
- 肝臓腫瘍(肝臓がん)
- 急性肝炎
- 慢性肝炎
- 肝硬変
- 門脈シャント
それぞれ詳しく解説していきます。
肝臓腫瘍(肝臓がん)

肝臓腫瘍は、肝臓にできる悪性の腫瘍です。さまざまなものがあり、肝細胞癌や胆管がんなどがあります。
また、神経などに由来するカルチノイドという極めて危険なものや、血管由来のものなどもあります。
犬の肝臓腫瘍(肝臓がん)とはどのような病気か?の詳細はこちら
原因
肝臓腫瘍の発生原因はよく分かってはいませんが、高齢犬に多いと言われています。
また、クッシング症候群というステロイドホルモンが過剰に分泌される疾患では、ステロイドホルモンが肝細胞を変性させてしまうため、肝臓腫瘍の発生リスクをあげると言われています。
症状
犬の肝臓腫瘍は初期のうちは無症状のことが多いです。しかし、腫瘍が大きくなってくると、お腹が膨らんできたり、腫瘍が消化管を圧迫したりすることで、嘔吐や下痢などの症状が出てきます。
また、食欲不振や元気消失などがみられることもあります。
症状が進み肝機能が低下すると、皮膚や歯茎、白目の色が黄色くなる「黄疸」が出てくることもあります。
命への影響
犬の肝臓腫瘍がどれくらい命に影響するかは、「どんな腫瘍か」によって大きく変わります。
肝臓にできる腫瘍には、「良性」と「悪性」がありますが、犬では悪性のほうが多いとされています。
良性腫瘍で多いのは「肝細胞腫」というタイプで、進行はゆっくりです。腫瘍が肝臓の一部だけに限られていて、塊としてまとまっていれば、手術で取りきれることも多く、その場合は比較的良い経過が期待できます。
犬の肝臓腫瘍における良性の定義・確率についてはこちら
悪性腫瘍の中で最も多いのは「肝細胞癌」です。犬の肝臓の悪性腫瘍のうち、約70%を占めると言われています。肝細胞癌のうち半数以上は塊状にできるタイプで、できた場所によって手術の難しさは変わりますが、きちんと切除できれば、悪性でも比較的良い予後が報告されています。
一方で、胆管細胞癌、肝カルチノイド、肝リンパ腫、血管肉腫など、他のタイプの悪性腫瘍も稀に見られます。これらは全身に転移しやすく、特に血管由来の腫瘍やカルチノイドでは、腫瘍が破れて大きな出血を起こし、急変や死亡につながるおそれもあります。
そのため、「肝臓に腫瘍がある」と分かった段階で、どのタイプの腫瘍か、手術で取りきれる可能性があるかを早めに見極めることが、命への影響を考えるうえで重要になります。
犬の肝臓腫瘍(肝臓がん)の余命についてはこちら
犬の肝臓腫瘍(肝臓がん)の進行速度についてはこちら
治療方法
犬の肝臓腫瘍は、術前に良性か悪性かを鑑別するのは困難ですが、良性・悪性にかかわらず塊状の腫瘍の場合は手術によって完全切除できれば予後は良好と言われています。
そのため、CT検査などによって手術が可能と判断された場合には、手術が第一選択となります。
肝臓は複数の「肝葉」という塊に分かれていて、手術の方法としては、
- 肝葉ごと切除する「完全肝葉切除術」
- 肝葉の一部を切除する「部分肝葉切除術」
- 血管の走行によって肝臓を区域に分けて切除する「区域切除」
などがあります。
腫瘍の発生している位置や範囲などによって、どの範囲を切除するかを決定します。
完全に腫瘍が摘出できた場合の生存期間は1400日〜1800日と言われています。
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急性肝炎

犬の急性肝炎は、数日〜数週間という短い期間で肝臓に強い炎症が起こる病気です。ウイルスや細菌の感染、中毒、薬剤、免疫の異常などが原因となり、肝細胞が急速に傷つけられます。その結果、肝臓の解毒や栄養代謝などの働きが一気に低下し、短期間で重い状態へ進行しやすいことが特徴です。
原因
| 感染症 | 犬のアデノウイルス1型やレプトスピラなど、全身性の感染症由来で発症する |
|---|---|
| 中毒性 | 殺鼠剤、アセトアミノフェン、キシリトール、農薬などにより発症する |
| 外傷性 | 腹部の損傷などにより発症する |
| 遺伝性 | テリア系など、一部犬種には遺伝傾向がある |
症状
- 食欲不振・元気がない
- 嘔吐・下痢
- 黄疸(歯茎や白目が黄色くなる)
- 腹部の腫れ
- (重症化した場合)痙攣・昏睡 など
命への影響
原因疾患によりますが、急速に重症化するものだと命にかかわります。一方で早期に治療を開始すれば、回復が見込める病気です。
治療方法
- 原因に応じた薬物療法(抗生物質、強肝剤など)
- 点滴や輸血による支持療法
- 食事療法(肝臓に優しい療養食)
重症例では入院治療が必要となります。
慢性肝炎
慢性肝炎は、肝臓に長期間炎症が続く病気です。炎症が悪化すると、肝硬変や肝不全につながることもあります。
原因
多くの場面で、特発性(発生時点で原因不明)のことが多いです。
以下のような要因が考えられます。
- 感染性(犬のアデノウイルス1型やレプトスピラなど、全身性の感染症由来で発症する)
- 免疫介在性
- 中毒性(長期的な薬剤の使用)
- 遺伝性(ドーベルマン、コッカースパニエルなどの一部犬種)
- 腫瘍性
症状
- 食欲不振・体重減少
- 嘔吐・下痢
- 元気がない・疲れやすい
- 黄疸(歯茎や白目が黄色くなる)
- 腹水(お腹が膨らむ)
- 出血傾向(歯茎からの出血など)
命への影響
多くの場面で慢性経過のため、すぐに死に直結するわけではなく、病気と付き合っていく形が多いです。しかし、適切な治療をしない場面では生き死にに関わります。
治療方法
| 薬物療法 | 肝保護剤、抗炎症薬、免疫抑制剤など |
|---|---|
| 食事療法 | 肝臓に優しい療法食(低銅・高タンパクなど)、BCAAの給餌 |
| 定期検査 | 血液検査・エコーで進行度をチェック |
| 生活管理 | ストレス軽減、過度な運動の制限 |
肝硬変

肝硬変は、肝臓の細胞が破壊され、線維化する(硬くなる)ことで正常な機能が失われていく病気です。進行すると命に関わることもあるため、早期発見と継続的なケアが不可欠です。
原因
- 慢性肝炎の進行
- 中毒性(薬物の投与など)
- 自己免疫性(本来は外敵から体を守る免疫が、自分自身の細胞や組織を誤って攻撃してしまう状態)
- 遺伝性(ドーベルマン、ラブラドール、一部テリア)
症状
- 食欲不振・体重減少
- 嘔吐・下痢
- 黄疸(歯茎や白目が黄色くなる)
- 腹水(お腹が膨らむ)
- 出血傾向(鼻血・歯茎からの出血)
- 神経症状(ふらつき・意識障害)
命への影響
肝硬変は病理学的に改善される可能性のある病態です。肥満予防とバランスの良い食事を行い、遺伝的リスクがある犬種は定期検査を行うといったメンテナンスをしっかりすることで、改善を狙います。
ただし、肝線維症に発展すると、かなり予後が悪い(死につながる可能性が高い)とされています。
治療方法
前提として、進行した肝硬変は元に戻せず、根治は困難です。以下のような治療で、状態の改善を目指していきます。
| 支持療法 | 肝機能を補助する薬剤(肝保護剤、サプリなど) |
|---|---|
| 食事療法 | 低タンパク・低銅食、消化しやすい療法食 |
| 腹水管理 | 利尿剤や穿刺による除去 |
合わせて、血液検査やエコーで進行度を定期的に確認することも大切です。
門脈シャント

門脈シャントは、肝臓に流れるはずの血液が別のルートに逸れてしまう異常です。肝臓での解毒が不十分になり、さまざまな症状を引き起こします。特に若い犬で見つかることが多いとされていますが、どの年代でも見つかります。
原因
先天性要因が多いとされており、生まれつき血管の異常があることで発症リスクが高まります。先天性要因は、小型犬(ヨークシャーテリア、マルチーズなど)に多いとされています。
後天性要因としては、肝硬変などで肝臓の圧力が高まることが挙げられます。後天性要因は、中〜高齢犬に多いです。
症状
- 成長不良・体重が増えない
- 食欲不振・嘔吐・下痢
- 行動異常(ふらつく、ぼんやりする、痙攣する)
- 腎臓結石や尿管結石ができやすい
- 昏睡状態(肝性脳症)
命への影響
命への影響は、原疾患と臨床症状によります。血管の状況によって手術により改善できるケースもあります。
肝性脳症で昏睡になった場面や、肝硬変の末期になった場面などでは、生き死にに関わるケースが多いです。
治療方法
| 内科的治療 | 食事療法(低タンパク食)、肝機能補助薬、抗生物質、ラクツロースなど |
|---|---|
| 外科的治療 | シャント血管を閉鎖する手術(アメロイドコンストリクターなど) |
犬の肝臓病は初期段階だと顕著な症状が現れづらい

肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、病気の発症当初は非常にわかりにくいです。
少なくとも、一般的な院内の検査で肝酵素が高いという問題があっても、無症候性(何らかの病気があるにもかかわらず、無症状の状態)に推移する場面が多く、「肝臓の酵素が高い=肝臓が悪い」とは言えません。同時に肝臓が頑張れているうちは、無症候性に推移します。
気づいたときには命にかかわる状態まで進行している可能性があることが、犬の肝臓病の怖いところです。
犬の肝臓病の診断方法

犬の肝臓病の診断方法としては、
- 血液
- レントゲン
- 超音波
- 必要に応じてCT
などが挙げられます
犬の肝臓病を予防するには

肝臓病の予防以外にもいえることですが、適切な食事管理を実施しましょう。
定期的な通院をするとともに、普段から愛犬の体をよく触り、少しでも変と感じたら受診する勇気が大切です。
まとめ

犬の肝臓病は共通して「初期症状が目立ちにくい」という特徴があり、発見の遅れが重症化につながりやすい病気です。肝臓腫瘍・急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変・門脈シャントなど病気の種類によって原因も治療も大きく異なるため、正しい診断と継続的なケアが重要になります。
普段から食欲や体重、元気の変化に気づけるよう観察し、少しでも違和感があれば早めに獣医師に相談することが、愛犬の健康を守るうえで大切です。
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