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犬の多中心型リンパ腫とは?原因や治療についても解説

犬の多中心型リンパ腫とは?原因や治療についても解説
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この記事の監修者

上野雅祐

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

▼略歴

  • 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
  • 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
  • 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
  • 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
  • 日本小動物がんセンター 研修医


▼所属学会・資格

 

犬の多中心型リンパ腫は、犬のリンパ腫の中でもっとも多い病型です。

治療を行わなければ余命は4〜6週間といわれており、予兆が見られる場合は一刻も早く診察を受けさせる必要があります。

この記事では犬の多中心型リンパ腫とはどのような病気かを説明したうえで、原因や治療について解説します。

当院には腫瘍専門医が在籍しており、犬の多中心型リンパ腫に対して精度の高い診断と最善な治療提案が可能です。少しでも不安がある場合はすぐにご相談ください。

当院の腫瘍治療について

犬の多中心型リンパ腫とは?体表のリンパ節が腫大する病型

犬の多中心型リンパ腫とは?

犬の多中心型リンパ腫とは、リンパ腫のうち体表のリンパ節が腫大する病型です。

そもそもリンパ腫とは、白血球のうちの1つであるリンパ球が腫瘍化し増殖する病気です。リンパ腫にも多中心型、前縦隔型、消化器型、皮膚型、節外型などさまざまな病型があり、その中でも多中心型リンパ腫はもっとも発生の多い病型です(70〜80%)。

多中心型リンパ腫のほとんどは、びまん性大細胞型B細胞型リンパ腫(DLBCL)と呼ばれる高悪性度のタイプに分類されます。

その他にもT細胞T領域リンパ腫と呼ばれる低悪性度のタイプなど、多中心型リンパ腫の中でもさまざまなタイプが存在します。

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犬の多中心型リンパ腫で現れる症状

犬の多中心型リンパ腫で現れる症状

犬の多中心型リンパ腫の特異的な症状は体表リンパ節の腫大のみで、病態が進行するまでは症状を認めないことがほとんどです。

病態が進行すると、食欲不振、元気低下、発熱、体重減少、下痢などの症状が現れることがあります。

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犬の多中心型リンパ腫で腫れるリンパ節

犬の体表リンパ節は、主に下顎、浅頸、腋窩、鼠径、膝窩において左右対称に存在します。

犬の多中心型リンパ腫では、これらのリンパ節が1箇所〜複数箇所で腫大します。

多中心型リンパ腫になった犬の余命

多中心型リンパ腫になった犬の余命

ほとんどの犬の高悪性度リンパ腫は、治療を行わなければ余命は4〜6週間といわれています。

高悪性度の治療はCHOP療法と呼ばれる抗がん剤治療が一般的です。CHOP療法は90%程度で良好な治療反応を示し、余命は約1年まで延長するといわれています。

犬の多中心型リンパ腫の原因

犬の多中心型リンパ腫の原因

多中心型リンパ腫の原因ははっきりと分かっていません

しかし、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバー、ボクサー、シーズーなどの中高齢以上で発生しやすいことから、遺伝的要素が関与してるとも考えられています。

犬の多中心型リンパ腫の診断方法

リンパ腫の診断は、リンパ節を摘出して行う組織生検による診断が好ましいです。しかし、全身麻酔が必要となるため、まずはリンパ節に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する「細胞診」という方法で診断をすることが多いです。

細胞診で確定的な所見に欠ける場合は、組織生検やフローサイトメトリー、クローナリティー検査などを追加実施する必要もあります。

犬の多中心型リンパ腫の治療方法

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犬の多中心型リンパ腫の治療は、腫瘍を上手く抑え込める状態(寛解)を長く保つことが目標となります。リンパ腫は全身性の疾患であり、目に見える腫瘍がなくなったとしても、完治したとはいえないためです。

犬の多中心型リンパ腫の標準的な治療は、CHOP療法と呼ばれる抗がん剤治療です。CHOP療法とは、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンを用いた多剤併用の化学療法のことです。

多剤併用することで、抗がん剤の副作用を抑えつつ、最大限の効果を得ることができます。

国内でもっともよく用いられる「UW-25」というプロトコール(治療手順)は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンを1週間ごとにローテーションで投与し、これを25週間継続する方法です。

プロトコールを終えて寛解となれば、抗がん剤の投与を終了し、再発がないかを定期的に確認します。もし再発してしまった場合は、再度抗がん剤治療を始めます

最初に用いた抗がん剤に耐性ができてしまっている場合には、レスキュー療法というものを実施します。レスキュー療法には

  • LAP療法(ロムスチン、L-アスパラキナーゼ、プレドニゾロン)
  • DMAC療法(デキサメサゾン、メルファラン、アクチノマイシンD、シトシンアラビノシド)

を用います。

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当院における犬の多中心型リンパ腫の症例(5歳のわんちゃんの症例)

当院における犬の多中心型リンパ腫の症例

オーナーさんが首のしこりに気付いて来院されました。

下顎、浅頚、鼠径、膝窩リンパ節が20〜50mm程度に腫大しており、FNA(針による細胞摂取)を実施したところ高悪性度の多中心型リンパ腫と診断されました。

抗がん剤治療を開始し、初回のプレドニン、L-アスパラキナーゼの投与後に体表リンパ節はほとんど触れないほどまで縮小しています。その後25週かけてビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニンをローテーションで投与し、寛解が認められたため、抗がん剤治療を終了しました。

治療終了後は、11歳まで当院で定期的に経過観察を行い、再発が認められないことを確認しました

その後、お引越しを機に当院では経過をみることはできていませんが、発症からお引越しまでの6年間元気に過ごしてくれていました。

犬の多中心型リンパ腫を未然に防ぐには

犬の多中心型リンパ腫を未然に防ぐには

犬の多中心型リンパ腫は、根治が難しい腫瘍ではありますが、早期に抗がん剤治療を行うことで生存期間を伸ばすことができます。そのため早期発見・早期治療が何よりも大切です。

普段からスキンシップをよくとり、顎の下や脇、膝の裏など細かい部分までよく触って、身体にしこりのようなものを見つけたらすぐにご相談ください

また病院で触診させていただくことも早期発見につながるので、定期的に健康診断を受けていただくこともおすすめします。

当院の腫瘍治療について

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