L-アスパラギナーゼは、犬のリンパ腫治療で広く選択される抗がん剤です。この記事では、犬のリンパ腫に対するL-アスパラギナーゼの効果について詳しく解説します。
犬のリンパ腫に対してどの抗がん剤を選択し、どのように投与を進めるかは、獣医師の知見が大きく問われる部分です。少しでも良好な予後とするためにも、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績を誇る当院にご相談ください。 |
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東京都大田区上池台5丁目38−2
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大阪府大阪市港区弁天1丁目4−9 第3柴田ビル 104
大阪府大阪市鶴見区放出東2丁目19-8
この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
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▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
L-アスパラギナーゼとは

L-アスパラギナーゼは、代表的な抗悪性腫瘍薬(いわゆる抗がん剤)です。アスパラギンを加水分解し、アスパラギン酸とアンモニアに分解します。この効果により、血中のアスパラギン酸が枯渇します。
犬のリンパ腫に対するL-アスパラギナーゼの効果

悪性リンパ球(リンパ腫)の増殖には、アスパラギン酸が必須です。L-アスパラキナーゼを使用することでアスパラギン酸が枯渇し、がん細胞は栄養不足状態になり、増殖が阻止されて死滅します。
犬のリンパ腫とはどのような病気か?についてはこちら
犬のリンパ腫においてL-アスパラギナーゼが選択されるケース

L-アスパラキナーゼは犬の悪性リンパ腫、リンパ性白血病の化学療法に適用されます。
副作用がほとんどないため、本格的な抗がん剤治療に入る前に単独使用される場合が多いです。初期段階に使用して、リンパ腫で弱った体力を回復させるような目的で使用します。
犬のリンパ腫の初期症状についてはこちら
犬のリンパ腫はL-アスパラギナーゼのみで寛解させられるのか?

犬のリンパ腫は、L-アスパラキナーゼのみで寛解する場合もあります。しかし、単独使用だと再発してしまう可能性は非常に高いです。
リンパ腫は比較的、抗がん剤がよく効くがんです。そのため、複数の薬剤を組み合わせて治療を行います。多剤併用をすることで、抗がん剤の相乗効果や副作用の分散が期待できます。
犬のリンパ腫が治った事例はある?についてはこちら
L-アスパラギナーゼと他の抗がん剤の違い

L-アスパラキナーゼは他の抗がん剤のように骨髄抑制や消化管毒性がなく、安全な薬であると言えます。悪性リンパ球が必要とする栄養を分解する作用機序であり、他の抗がん剤とは異なり、がん細胞以外の体内の細胞には影響を及ぼさないためです。
ただし、がん細胞に直接的に作用するわけではないため、効果に関してはあまり長続きせず、そこまで強い抗がん剤ではありません。
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犬にL-アスパラギナーゼを投与した際の副作用

L-アスパラキナーゼの代表的な副作用として、膵炎やアナフィラキシーショックが挙げられます。どの犬でも起きる可能性はあるため、初回投与時には体調の変化や反応をしっかりと観察する必要があります。
また、単独使用では骨髄抑制は起きませんが、ビンクリスチンと同時使用すると、重度の骨髄抑制が引き起こされることが知られています。
犬に対するL-アスパラギナーゼの投与方法

L-アスパラキナーゼは皮下注射や筋肉注射で投与します。消化管からは吸収されないため、自宅で行える内服薬ではありません。
また、副作用であるアナフィラキシーショックを予防するために、あらかじめ抗ヒスタミン薬の前投与を行います。
投与量はその子の体重に合わせて調節しますが、犬は概ね400IU/kgで投与します。1回、あるいは週1回の投与にて改善する場合が多いです。
犬のリンパ腫をL-アスパラギナーゼで治療にするのにかかる費用

当院の場合、12kgまでの犬であれば、1回使用で約13,000円で注射治療を行っています。
L-アスパラキナーゼは週1回の投与を1〜2回した後に、多剤併用治療が行われるため、検査費用も含めて20,000〜40,000円ほどで治療を進めていきます。
犬のリンパ腫治療に使う抗がん剤の費用目安についてはこちら
犬のリンパ腫に対してL-アスパラギナーゼを用いた症例

元々、下痢をしやすい30kgの9歳のラブラドール・レトリバーがいました。下痢以外は元気であり、糞便検査でも特に目立つ所見は認められず、胃腸炎として対症療法で治療できる場合がほとんどでした。
しかしある時、いつものように下痢が起き、胃腸炎として1ヶ月ほど対症療法を行っていましたが、なかなか改善が認められず、抗生剤などにも反応しませんでした。体重も28kgまで減少したため、検査として腹部超音波検査を追加しました。すると、結腸に腫瘍が認められ、細胞診にてリンパ腫が疑われました。
消化管型のリンパ腫と診断し、すぐにL-アスパラキナーゼによる治療を開始しました。L-アスパラキナーゼ400IU/kgを筋肉注射で投与し、対症療法も並行して行いました。
副作用はなく、投与後1週間で寛解が認められ、下痢もすぐに治まりました。大きな副作用もなく、治療反応が良好であったため、そのまま抗がん剤の多剤併用療法へと移行することができました。
▼この症例を踏まえて
胃腸炎がなかなか治らない場合には、一度精密検査を行うべきです。大型犬の結直腸リンパ腫は治療反応が良いと、長期的な予後が期待できるので、本症例は早期に発見して治療に進むことができました。
まとめ

L-アスパラキナーゼは副作用がほとんどないため、本格的な抗がん剤治療に入る前に単独使用される場合が多い薬剤です。他の抗がん剤よりも安全とされています。
ただし、単独使用だと再発してしまう可能性は非常に高く、他の薬剤を組み合わせて治療を行うのが一般的です。
犬のリンパ腫に対してどの抗がん剤を選択し、どのように投与を進めるかは、獣医師の知見が大きく問われる部分です。どの動物病院で治療を受けるかで、予後が大きく変わってくる可能性があります。
犬のリンパ腫治療をこれから進める場合、あるいは他院を一度受診しているものの診断・治療に不安が残っている場合は、ぜひ当院までご相談ください。1000症例を超える治療実績をもとに、正確で迅速な検査と治療提案が可能です。
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