犬のパテラの「グレード1」は、手術の必要はないものの、自然に治ることはほとんどありません。

ここでは、犬のパテラ「グレード1」について詳しく解説します。

この記事の監修者

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

監修者情報

▼略歴

• 麻布大学　獣医学科卒業（学業成績優秀者）
• 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
• 神奈川県　外科認定医・整形専門病院にて勤務医
• 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
• 日本小動物がんセンター　研修医

▼所属学会・資格

• 日本獣医がん学会
• 日本獣医画像診断学会
• 日本小動物歯科研究会
• 日本獣医麻酔外科学会
• 日本獣医循環器学会
• 日本獣医皮膚科学会
• 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
• ヒルズ栄養学コース修了
• Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
• 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
• 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4

犬のパテラ「グレード1」はどのような状態か？

パテラのグレード1は、膝蓋骨は脱臼せずに正しい位置にありつつも、手で押すことで脱臼させることができる状態です。

膝蓋骨が過剰に動くことはあるものの、通常の歩行中に膝蓋骨が脱臼することは稀な状態です。一時的に脱臼が起こると、後肢の挙上が起こります。

身体検査においては、膝関節を伸ばした状態で容易に脱臼させることが可能ですが、加圧を解除すると膝蓋骨は元の位置に整復されます。

犬のパテラ「グレード1」は自然に治る？放置しても大丈夫？

パテラはグレード1の段階でも、自然に治ることは難しいです。放置すると、状態はさらに悪化する可能性があります。

パテラの発生要因として、大腿四頭筋群の発育障害・大腿骨の湾曲変形・頚体角の減少・膝蓋骨高位などが挙げられ、これらが複合しているケースもあります。これらの要因が残る限り、パテラは自然に治りません。

グレード1の状態から症状を進行させないようにするには、膝に負担がかからないようにする保存治療が必要です。

愛犬がパテラ「グレード1」と診断された場合、どのように治療していく？

パテラがグレード1の状態の場合、膝関節に負担がかからないように内科的治療や保存治療を実施します。手術は適応ではありません。

動物病院では、関節への負担がかからないよう、体重管理を徹底すると共に安静に過ごすようにお願いしています。痛みを感じているようであれば、消炎鎮痛剤や関節炎予防のためのサプリメントを処方します。

パテラ「グレード1」と診断された愛犬との過ごし方

パテラのグレード1の段階では、関節になるべく負担がかからないように安静に過ごさせましょう。

滑りやすい床などの生活環境の見直しを行い、膝を捻るなどの運動をなるべく控えてください。肉球周りの毛は滑りやすくなる原因にもなるため、定期的に肉球を覆う毛はカットしましょう。

また、体重が増えることで膝に負担がかかってしまいます。肥満にならないように食事管理を徹底してください。

パテラ「グレード1」と診断された愛犬は普通に散歩させて大丈夫？

筋力の維持や肥満防止の観点から、むしろ散歩はさせるべきです。ただし、滑らない・段差のない場所を選び、膝に負担がかからないようにしましょう。激しい運動は症状を悪化させるため、飼い主がコントロールしてあげることも大切です。

まとめ

犬のパテラ「グレード1」は、手術が必要ない軽度の段階とはいえ、自然に治ることはほとんどありません。放置すると関節の不安定さが進行し、グレード2・3へと悪化するリスクが高まります。

進行を防ぐために重要なのは、体重管理・滑らない床環境・無理のない散歩といった日常のケアです。筋力維持も求められるため、完全な運動制限ではなく、負担の少ない散歩をコントロールしながら続けることが大切です。

パテラは初期から適切な管理を行うことで、愛犬が痛みなく快適に過ごせる期間を長く保つことができます。不安がある場合や「これって悪化している？」と感じた際は、早めに整形専門医へご相談ください。最適な治療方針と生活管理のアドバイスをご提案します。