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コラム COLUMN

猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)の治療、MUTIAN(ムティアン)の効果について 実際の症例から解説します!

猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)の治療、MUTIAN(ムティアン)の効果について

MUTIAN(ムティアン)とは

MUTIANとは致死率ほぼ100%のFIPに対して有効な治療薬です。 今までは分からない事が多かったですが、最近ではいくつかの論文でその治療効果の報告が出ています。 当院でもこの治療薬を用いる事でおよそ90%程度の改善が認められています(重症例を除く) ムティアンのエビデンスについてはこちらを参照してください。

FIP(猫伝染性腹膜炎)に対する治療薬MUTIAN(Xraphconn)のエビデンスについて

今回は実際のFIP症例に対しMUTIAN(ムティアン)を使用し顕著な改善が認められた症例について解説します。

MUTIAN治療の実際の症例について

症例1

ノルウェージャンフォレストキャット 10ヶ月 去勢雄

<主訴>

右眼の赤み、食欲減退、他院でFIP 疑いと診断されました。 電話で症状を聞いたのちすぐに来院してくれました。

<臨床症状>

1ヶ月前より咳を伴う事が多くなった。 右眼はFIPに特徴的なぶどう膜炎を呈していて、虹彩の色が赤く変色していました。(レッドアイ)

<検査結果>

  • 蛋白分画:ポリクローナルガンモパシー
  • 腹部超音波検査:胃リンパ節の腫大
  • 猫α1酸性糖タンパク(AGP):2,590ug/mL(>2480ug/mLで93%のFIPの可能性)
  • コロナウイルス抗体検査:6400

以上の検査よりFIPを強く疑う

<診断>

FIPドライタイプ(眼病変:ぶどう膜炎 レッドアイ) FIPステージ:中期

<治療>

来院当日から注射薬により治療。 3日目に眼病変が改善したため投薬に変更。 14日目にリンパ節縮小 その後の投薬も順調で症状の再発は認めなかった。

<解説>

FIPに特徴的なレッドアイと呼ばれる状態は有名で、症状に気付きやすいです。 しかしながらFIPの診断において重要なのは、他に異常所見がないかと考える事です。 この猫ちゃんでも、レッドアイ以外に胃のリンパ節の腫大が認められました。 MUTIANによる84日の治療の中で、「全ての症状が改善しているか」という事は寛解に導く際や再発させない上で非常に重要な考え方です。

症例2

ロシアンブルー 1歳5 ヶ月 去勢雄 <主訴>:嘔吐、食欲不振 近医でFIP を疑い、紹介で高度医療センターに来院するも重度のFIPで治療方法が無いと言われ当院に来院。

<臨床症状>

半年前から徐々に食欲減退、嘔吐を認める。

<検査結果>

  • 腹水中のコロナウイルス遺伝子検査によりFIPウイルス陽性
  • 血液検査:重度貧血、軽度黄疸
  • エコー検査にて腎臓不正
  • 心臓エコー検査により拘束型心筋症

<診断>

FIPウエット・ドライ混合 貧血重症 FIPステージ:後期

<治療>

FIP重症のため来院当日から入院治療。 貧血がHCT 14%(基準値:24%<)で全身状態も悪かった。 7日間の入院治療により貧血が少しづつ良化 19日目にはHCT36.6%に改善。 33日目には心エコー検査にて拘束型心筋症も改善。 食欲、体重も増加し 今までで一番元気!というくらいに回復した。

<解説>

HCTの低下を認め、状態も悪くFIPの後期に分類されます。 腹水と同時に腎臓の不正も認められたため、FIPウエット、ドライ混合型に分類されます。 FIPは重症度が進むほど治療に反応しづらい傾向にあります。 そのため、この猫ちゃんに関しては入院治療で点滴や造血薬を用いて状態を持ち上げながらMUTIANを使用する事で治療を奏功することが出来ました。

また、FIPと同時に心不全を併発することも少なからずあります。 FIPの治療がうまくいくとその後、改善することもありますので心臓超音波検査による定期的なモニターが重要になります。 FIPの進行具合によって治療方法を考える事は非常に重要と考えられる症例でした。

症例3

雑種 2歳6ヶ月 去勢雄

<主訴>

3日前より食欲減退 昨日近医にて腹水貯留を検出、腹水を抜去した。 FIPの疑いで当院へ

<臨床症状>

食欲減退はあるが食べられてはいる。腹囲膨満。

<検査結果>

  • 蛋白分画:ポリクローナルガンモパシー
  • コロナウイルス抗体
  • 猫α1酸性糖タンパク(AGP):2,940ug/mL
  • 血液検査:T-bli (総ビリルビン)1.6mg/dlと高値
  • 腹部超音波検査にて腹水貯留、腎臓腫大

<診断>

FIPウエット・ドライ混合 FIPステージ:早期

<治療>

全身状態は悪く無いものの、予後不良因子である T-bil(総ビリルビン)が高値のため3日目までは院内で投薬治療を行なった。 3日目にT-bilが0.5mg/dlと改善したため自宅での投薬治療に切り替えた。 投薬方法に不安があったため来院毎に投薬方法の指導を行なった。 20日目にT-bil 0.1mg/dl と改善し、腹水も消失、腎腫大も改善した。

<解説>

FIPにおいて黄疸(T-bilの上昇)の有無は非常に重要になります。 なぜならば黄疸が進めば進むほど治療への反応が悪くなるからです。 この猫ちゃんでもT-bilが1.6と高かったため初期の投薬量に注意して治療を行いました。 幸いにもすぐに治療に反応してくれ改善が認められました。 FIP治療の改善率は90%と言われていますが、あくまでも症状が進んでいない症例に限られます。本症例のように黄疸が出ている場合にはより積極的な治療が必要になります。

また、猫ちゃんの投薬は難しいため自宅での投薬に切り替えるのに飼い主様の不安があるかもしれません。 特にMUTIAN治療に関しては84日間決まった時間に正確に投与必要があります。 本症例でも通院の度に毎回、投薬練習をレクチャーする事で自宅での投薬もうまく行えるようになりました。

FIP治療についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

まとめ

以上、3症例を解説しましたが、まとめると以下の点が重要です。

  • FIPの症状は多岐にわたるため早期の診断が困難
  • FIPステージを正確に分類し、ステージに合った治療方法を選択する
  • 全ての症例で治療薬に改善する訳ではなく、特に予後不良因子がある場合には早期から積極的な治療が必要になる

 

当院でのFIPの診断・治療に関しては こちらを参照の上ご相談下さい。

ラインでの無料相談も行なっています。

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