大田区・西馬込駅で動物病院なら上池台動物病院

コラム COLUMN

猫のFIP治療を確実に成功させるために。実際の重症症例から重要点を解説

インスタグラムアイコン youtubeアイコン

この記事の監修者

上野雅祐

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

▼略歴

  • 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
  • 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
  • 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
  • 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
  • 日本小動物がんセンター 研修医


▼所属学会・資格

 

猫のFIPは以前までは、ほぼ治らない病気として認識されていましたが、

現在では正しい治療をすれば90%以上は治る疾患となっています。

ここでは、FIPと診断され悩まれている方に治療を確実に成功させるために

重要な事をお伝えします。

猫のFIP治療を行う上で必ず考えた方が良い事とは?


①本当にFIPかどうか

猫ちゃんのFIP治療を始めるにあたって、まず重要な事はFIPか別の疾患かを考える事です。FIPは症状が多岐にわたり、場合によっては診断に苦慮することが多いです。
またFIP治療薬はFIPでのみ有効で、他疾患に対しては全く作用しません。
ですので、FIPか別疾患なのかをまず初めに考えます。
FIPでは発熱・若齢での発生・胸水腹水の貯留・肉芽腫などが診断のポイントになってきます。
ただし、高齢猫の場合にはリンパ腫などの腫瘍性疾患と見分けがつきづらいため特に注意が必要となります。

当院ではFIP治療に多数の実績がある事、腫瘍の認定医が在籍する事から

FIPと間違えやすい腫瘍性疾患に対しても、正確に鑑別を行い

治療方針を組み立てて行くことが可能です。

②FIPがどのタイプか、また重症度はどのくらいか

FIPは腹水・胸水がたまるウエットタイプと腎臓・腸管・リンパ節などに肉芽腫をつくるドライタイプに分かれます。
このタイプの違いに加え、貧血・黄疸・眼病変の有無などを合わせて総合的に重症度が決まります。

ウエットタイプは胸水や腹水の貯留が認められるため、比較的診断しやすいですが

ドライタイプでは小さなリンパ節の腫れや腸管が一部肥厚しているなど、詳しく検査を行わないと

診断が正確に行う事ができないため注意が必要です。

またウエット・ドライ混合タイプといい、両方のタイプが混じりあったものも存在します。

これは、ウエット単独・ドライ単独のタイプに比べ重症度が高い傾向にあります。

ですので、腹水・胸水が認められたからといって、ウエットタイプのみでの治療を行うと治療がうまくいかないことがあるため注意が必要です。

タイプや重症度を判定する事は、それ以降の投薬量を決める上で重要になります。

重症度が高ければ高いほど、治療への反応が悪くなる可能性があり、

より積極的な治療が必要になります。


③猫ちゃんの状態によって注射薬・錠剤(粉)のどちらにするかと用量の決定

FIPの治療薬には注射薬と錠剤の2種類があります。
FIPの猫ちゃんの状態に合わせてどちらを使用するかを決めます。

軽度のFIPの猫ちゃんであれば飲み薬である錠剤を使用すれば良いですが、重症度が高い場合であれば注射薬を選択することになります。注射薬でも錠剤でも成分が同一で効果は一緒とされていますが、呼吸困難、下痢・嘔吐などの症状を伴っている場合には飲み薬は難しいので注射薬の方が安全に効果を得る事が可能です。

また、②で決めたタイプと重症度に合わせて適切な薬用量を決めていきます。重症例であればあるほど、薬用量が多く必要になるため、重症度の分類とそれに合わせた量の調節が重要になります。

薬用量は非常に重要になってきます。

なぜならば、薬用量が足りていないと最初の症状は改善するけど、後から気づかなくうちに症状が悪化していて、薬を増量しても効かなく事があるからです。

ですので、最初の重症度を正確に決める事とそれに伴い、適切な薬用量で治療する事が重要となります。

重症例からFIP治療の重要点を振り返る

それでは実際のFIP猫ちゃんの症例をみていきましょう。
<症例>
ロシアンブルー 1歳 去勢オス

<主訴>

他院でFIP疑いと診断されご来院されました。

去勢手術時の貧血が重度で、その後経過をみていましたが、徐々に食欲・元気がなくなり

歩行することが困難に。

<臨床症状>

来院時には起立不能で横たわった状態でした。

また重度の黄疸と貧血が認められました。


<検査結果>

蛋白分画:ポリクローナルガンモパシー

腹部超音波検査:空腸リンパ節の腫大

<診断>

FIPタイプ:ドライタイプ  FIP重症度ステージ:後期

<治療>

起立困難と黄疸・貧血が認められため

FIPの後期(最も重症度が高い)として治療。

重症度が高く、薬の投薬が危険と判断し注射薬での治療を選択。

治療開始から10日目まで入院治療と注射によるムティアンの治療を続けました。

重症度が高いため治療に反応するのに時間がかかりましたが

治療開始5日目に自分でトイレに行くことも可能になりました。

その後、定期的な検査を行い、薬が効いているかの判断を慎重に行い。

84日間の治療を終えました。

84日の治療を終えた後には体重が1kgも増え、

少しぽっちゃりとした体型くらいにまで回復し、歩行も問題なく行え

ジャンプもできるようになっています。

<解説>

FIPの神経症状のタイプでは、立てない・首がのけぞる・発作などの症状が起こることが多く

早期の積極的な治療が望まれます。

また、ドライタイプのため確定診断が難しく、MRIなどの検査を行っても

恐らくFIPの可能性が高いと診断にとどまる事もあります。

本症例では血液検査と、神経症状の出方からFIPの後期症例と診断し

早期に治療を行なったのが良かったと思われます。

また、重症度が高いほど投薬が難しくなるため症状が安定するまで注射薬を選択したのもポイントです。

FIP治療薬の種類によっては注射薬が存在しないものもあり、重症例での治療が難しくなることもあります。

当院では多数のFIP治療の実績があり、また注射薬と錠剤と複数の選択肢を持っているため

今回の症例でも診断と同時に治療を行えた事が奏功したと思われます。

まとめ

FIPは急速に進行する可能性があり、早期治療が重要です。

また、治療が早いほど成功する確率が上がります。

ですので、検査結果を待って病態が進むのを待つよりか

FIPの可能性が高いのであればすぐに治療した方が良いと思われます。

当院であれば正確な重症度分類とそれに基づく

適切な薬の用量投与が可能です。

FIP治療にお悩みの方は、是非ご相談ください。


RANKINGRANKIGの関連記事