リンパ腫は犬の病気の中でも致死性が高いとされており、その余命について気になる飼い主さんも多いでしょう。
リンパ腫になった犬の余命は、当然ながら治療する・しないで変わってきます。
この記事では、リンパ腫になった犬の余命について解説します。
リンパ腫になった犬の余命は残念ながら短いものの、早期の治療により延命は可能です。実際に当院では、適切な抗がん剤治療によって余命を5年程度延ばせた症例もあります。 「少しでも余命を伸ばしたい」という気持ちがあるなら、ぜひ当院にご相談ください。 |
当院の腫瘍治療について
この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
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▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
犬のリンパ腫を治療しない場合の余命

リンパ腫になった犬の余命は、腫瘍の発生部位や構成する細胞により変わってきます。
もっとも一般的な多中心型リンパ腫の高悪性度のものでは、治療しないで経過観察を行った場合の平均的な余命は1〜2ヶ月程度といわれています。
その他のリンパ腫では、たとえば消化管に発生するもの(消化器型リンパ腫)では、嘔吐や下痢などの消化器症状の悪化により急速に状態が悪化することがあり、その状況次第で余命が変化します。
また、皮膚に発生するもの(皮膚型リンパ腫)では、数ヶ月間診断がつかないまま徐々に悪化するという、ゆっくりとした経過をたどることがあります。
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犬のリンパ腫を治療した場合の余命

犬のリンパ腫を治療した場合の余命は、リンパ腫の種類によって変わってきます。
多中心型リンパ腫の場合
犬のリンパ腫でもっとも多くみられる多中心型リンパ腫で抗がん剤治療を実施すると、おおよそ1年程度余命が延長します。症例によっては1年半から2年近い生存期間の場合もあります。
当院で最も治療効果があった症例では、UW-25という抗がん剤治療により生存期間を5年程度延ばせています。
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消化器型リンパ腫の場合
消化器型リンパ腫では、通常行われる抗がん剤治療に対して抵抗を示すため、余命の延長期間は多中心型には及びませんが、治療が順調だと半年程度の余命延長が望めます。
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皮膚型リンパ腫の場合
皮膚型リンパ腫も抗がん剤治療に対しては抵抗性であり、かつ情報も少ないためばらつきがありますが、おおよそ3ヶ月から半年程度の余命の延長が期待されます。
リンパ腫になった犬の余命が短くなってしまう理由

リンパ腫になった犬の余命が短くなってしまう理由は、栄養状態の悪化による消耗です。癌ができることにより、従来であれば喪失しなかった生命維持に使用するはずのエネルギーが、癌や炎症により消費されてしまうのです。
栄養状態が悪化した状態が長く続くことで、身体が早く消耗し余命を短縮することとなります。これに加え、その病変の発生部位により、消化器症状や呼吸器症状などを伴うことで更に負担がかかり、余計に余命を縮める結果となります。
また、悪性腫瘍は遺伝子の異常により細胞が異常増殖している状態であるため、進行速度が早く転移も起こします。加えて、遺伝子の変異が進むことで抗がん剤に対する耐性を獲得し、治療が困難となります。これが、犬のリンパ腫が治療でも完治に至らない理由です。
時間が経過するほど悪化していくからこそ、早期発見と治療開始がその後の余命に大きく影響します。
リンパ腫になった犬を「あえて治療しない」という選択肢はあるのか

抗がん剤治療を実施することで、本来の余命以上に長く生存してくれる子もいます。これは治療してみなければわかりませんが、より長い期間一緒にいられる可能性があるのであれば、治療することが全く無価値というわけではありません。
また、病状が悪化した動物については、その状態を少しでも緩和することで苦痛を和らげることができます。犬のリンパ腫に関しては、残念ながら最終的な結末を変えることは難しいのが現状ですが、そこに至る過程で少しでも快適に、穏やかな時間をご家族と過ごすためにも、抗がん剤治療を選択することは重要です。
リンパ腫になった犬の余命を伸ばすには

リンパ腫になった犬の余命を伸ばすには、早期の治療開始が何よりも大切です。
ご家庭で犬のリンパ腫の兆候を掴むには、次のことに注意して日頃の状態を確認してください。
体を触りしこりができていないかを確認する | 多中心型リンパ腫では頸部、脇の下、鼠径部などの全身のリンパ節が腫れます。皮膚型リンパ腫では、リンパ節にかかわらず皮膚のさまざまな箇所が腫れます。 |
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食欲はあるか、下痢・嘔吐などの消化器症状が続いていないかを観察する | 消化器型リンパ腫では消化器症状が出ることが多く、長期的に続く場合や再発を繰り返している場合は注意が必要です。 |
呼吸が荒い・早いなど異常がないかを確認する | 通常の安静時の犬の呼吸回数は、1分間に35回くらいまでです。それよりも早くなっている場合や、明らかに息遣いが荒い場合には、胸のリンパ腫やリンパ節の腫れによる気道の圧迫が考えられます。 |
上記のような異常が認められた場合には、病院で適切な検査を受けましょう。病変部に直接アプローチできるのであれば、細胞診検査を実施すると診断可能な場合が多いです。
その他、症状に合わせた血液検査、画像検査などを実施し、早期の発見・治療開始ができれば、リンパ腫になった愛犬の余命を伸ばすことができるでしょう。
少しでも不安に思うことがあれば、腫瘍専門医が在籍する当院までご相談ください。犬のリンパ腫に対して多数の症例があるため、正確な診断と治療提案が可能です。
当院の腫瘍治療について