猫の鼻腔内リンパ腫はそのほとんどが悪性で、無治療だと1ヶ月から数ヶ月で亡くなってしまいます。少しでもよい予後とするには、鼻腔内リンパ腫について正しく理解し、早期発見・早期治療に努めることが大切です。

この記事では、猫の鼻腔内リンパ腫とはどのような病気かを詳しく解説します。

猫の鼻腔内リンパ腫は放置すると数ヶ月で死に至ってしまう病気ですが、正しい治療を実施すれば、3年以上の余命を得られるケースもあります。今の愛猫の状態に不安がある場合、あるいは他院で治療を受けたものの反応がよくない場合は、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績を誇る当院にご相談ください。

猫の鼻腔内リンパ腫とは？鼻腔内に腫瘍ができた状態

猫の鼻腔内リンパ腫とは、鼻腔内に腫瘍が発生した状態です。猫の鼻腔内腫瘍の中で、最も発生率が高い腫瘍です。また、猫のリンパ腫の中では、消化器型に続いて2番目に発生率の高い腫瘍です。

猫の鼻腔内リンパ腫のほとんどが悪性（高悪性度B細胞性）の挙動をとります。遠隔転移は少なく、局所浸潤性が強いのが特徴です。

過去の報告では、慢性的な症状がある鼻腔内疾患の猫の4割が腫瘍性疾患だったとのデータもあります。

若い頃から慢性鼻炎があり、治療反応が悪くなったときに色々と調べたところ、鼻腔内リンパ腫が見つかったということも珍しくはないようです。

猫のリンパ腫とはどのような病気か？についてはこちら

猫の鼻腔内リンパ腫で現れる症状

猫の鼻腔内リンパ腫では、以下のような症状が現れます。

• 鼻水、くしゃみ
• 鼻腔閉塞
• 顔面変形
• 元気・食欲の減退
• 鼻血

など

慢性的な鼻の症状があり、急に治療反応低下（抗生剤が効かないなど）があったとき、あるいは顔面変形が認められるようなときは要注意です。

鼻腔内リンパ腫になった猫の余命

	余命の目安
無治療	1ヶ月から数ヶ月
化学療法（抗がん剤）	150〜450日（約１年）
放射線療法	450〜1000日
化学療法＋放射線	200〜900日

それぞれの治療法を比べた報告の数が少ないため、解釈には注意が必要です。もっとも良い治療は一概に決まりませんが、化学療法や放射線に対する感受性は高いとされています。

いずれにせよ、飼い主さんや猫ちゃんに合わせて治療を選択することが重要です。

悪性リンパ腫になった猫は長生きできる？についてはこちら

鼻腔内リンパ腫になった猫はどのような最期を迎えるのか

猫の鼻腔内リンパ腫が末期を迎えると、鼻水、くしゃみ、鼻血などの鼻の症状が強くなり、顔面変形および鼻腔閉塞により呼吸がしづらくなります。

また、それに続いて元気食欲が低下し、その状態が続くことで、やがては亡くなってしまいます。途中までの症状はゆっくりと進むことが多いものの、最後の症状は急激に進むような傾向があります。

リンパ腫になった猫が死ぬ前に見せるサインについてはこちら

猫のリンパ腫に対する緩和ケアについてはこちら

猫の鼻腔内リンパ腫の原因

猫の鼻腔内リンパ腫の原因に関して、確かなことは分かっていませんが、飼い主のタバコには注意すべきです。

副流煙の吸入や、体に付着したタバコの成分を毛繕いの際に体内に取り込んでしまうことで、がんの発生率が上がる可能性が報告されています。

猫の鼻腔内リンパ腫の検査・診断方法

猫の鼻腔内リンパ腫は、以下のような方法で検査・診断を行います。

• 血液検査
• 画像検査（レントゲン、超音波検査）
• 細胞診検査
• ストロー生検、内視鏡検査

血液検査

血液検査は、一般的にはリンパ腫の診断には有効ではありませんが、一般状態を把握するためには重要です。

画像検査（レントゲン、超音波検査）

レントゲン検査では、鼻腔の骨が腫瘍によって破壊されていないかや、他の異物などがないかのチェックができます。

超音波検査では腫瘍の血流や大きさ、全身への転移を確認できます。

細胞診検査

膨らんだ鼻に細い針を刺すことで、腫瘍の細胞を採取し顕微鏡で評価します。多くの場合はこの検査で診断をつけることができます。

大暴れする猫ちゃんを除けば、無麻酔でできるのがこの検査のもっとも良い点です。

ストロー生検、内視鏡検査

麻酔下でストロー状の器具や内視鏡を使って、腫瘍を採取する方法です。

採取した検体を病理検査にかけることで、確定診断をつけられます。

猫の鼻腔内リンパ腫の治療方法

猫の鼻腔内リンパ腫の治療方法は、大きく分けて以下の2つです。

• 化学療法（抗がん剤）
• 放射線療法

それぞれ詳しく解説します。

化学療法（抗がん剤）

化学療法は、今の獣医療でもっともよく使用されている治療方法です。

現在最も使用されている抗がん剤はCOPもしくはCHOP療法と呼ばれる、多剤併用の抗がん剤プロトコル（複数の抗がん剤を組み合わせた抗がん剤プログラム）です。

1週間ごとに異なる抗がん剤を投与することで、より有効的にがんを攻撃します。

• C：シクロホスファミド（エンドキサン）
• H：ドキソルビシン
• O：ビンクリスチン（オンコビン）
• P：プレドニゾロン

また、一部の抗がん剤が効かなくなった場合には、他の抗がん剤を使用すること（レスキュー療法）や、1回の抗がん剤の増量を行うこともできます。

効果のある症例では、抗がん剤投与の数日後に顔面変形や鼻の症状が消失します。

放射線療法

全身麻酔を行い、放射線治療ができる施設で放射線の照射を行います。腫瘍が全身に広がっている場合には適応になりませんが、局所の場合は非常に有効的な治療です。

症例の状態によりますが、複数回の照射が必要です（毎日、隔日、週1〜5回など頻度はさまざま）。

猫の鼻腔内リンパ腫の目安治療費

• 化学療法（COPプロトコル）：50〜70万円程度
• 放射線治療：50万〜150万円程度

当院における猫の鼻腔内リンパ腫の症例

当院における猫の鼻腔内リンパ腫の症例を紹介します。

症状

くしゃみや鼻水がでており、他の病院で抗生剤などの治療を行ってもよくならず、数日前から顔面変形が認められた猫ちゃんです。

診断

レントゲン検査を行い、骨破壊のある場所に針を刺して細胞診検査を実施。病理検査に提出し、大細胞性リンパ腫と診断されました。

治療

抗がん剤治療（COP療法）を実施。1年間ほど頑張って一緒に治療をしてくれました。

初回の抗がん剤治療で顔面変形や鼻の症状がなくなり、その後も元気に維持してくれました。しかし、亡くなる1ヶ月前くらいから抗がん剤の効果が少なくなり、治療を終了し。最後は無治療で家族に見守られながら旅立ちました。

猫の鼻腔内リンパ腫を未然に防ぐには

猫の鼻腔内リンパ腫を確実に予防する方法はないので、早期発見をすることがもっとも大切です。

早期発見することで治療方法の選択肢が広がり、より有効的な治療を行うことができます。

猫の鼻腔内リンパ腫に関するよくある質問

まとめ

猫の鼻腔内リンパ腫は進行が早く、放置すれば数ヶ月で命に関わる深刻な病気です。しかし、早期発見と適切な治療によって、余命を大きく延ばすことも可能です。

慢性的な鼻水やくしゃみ、顔の腫れ、抗生剤が効かない鼻炎などの症状が見られる場合は、鼻腔内腫瘍の可能性を視野に入れて検査を受けることをおすすめします。

治療法には化学療法や放射線療法があり、いずれも症例に応じた選択が重要です。「愛猫にとって今の治療が最善なのか不安」「他の選択肢も知りたい」と感じたら、犬猫の腫瘍治療に豊富な実績を持つ当院にぜひご相談ください。愛猫の命と向き合う大切な判断を、私たちが全力で支えます。