ステロイドは、炎症を抑えたり免疫の働きを調整したりする目的で使用されます。猫のリンパ腫治療においても選択される場合はありますが、結論からいえば、その効果は限定的です。

この記事では、猫のリンパ腫をステロイドだけで治療した場合の余命について解説します。

この記事の監修者

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

監修者情報

▼略歴

• 麻布大学　獣医学科卒業（学業成績優秀者）
• 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
• 神奈川県　外科認定医・整形専門病院にて勤務医
• 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
• 日本小動物がんセンター　研修医

▼所属学会・資格

• 日本獣医がん学会
• 日本獣医画像診断学会
• 日本小動物歯科研究会
• 日本獣医麻酔外科学会
• 日本獣医循環器学会
• 日本獣医皮膚科学会
• 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
• ヒルズ栄養学コース修了
• Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
• 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
• 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4

猫のリンパ腫はステロイドだけで寛解を目指せる？

猫のリンパ腫の治療におけるステロイド投与は、あくまでも一時的な症状の緩和でしかありません。

そのため、ステロイドだけで寛解を目指すことは難しいです。

猫のリンパ腫をステロイドだけで治療した場合の余命

猫のリンパ腫をステロイドだけで治療した場合の余命は数週間、長くても数ヶ月です。

他の抗がん剤と併用することで6〜8ヶ月、場合によっては1年〜1年半ほどの余命が期待できることがあります。

猫のリンパ腫をステロイドだけで治療した場合の予後

ステロイドだけでの治療によって、猫のリンパ腫の進行を抑えることは可能です。しかし、それは一時的なものでしかなく、耐性がついて次第に効果が薄れていきます。

進行が抑えられなくなったリンパ腫は、全身に転移してしまいます。呼吸器に転移した場合、呼吸促迫や呼吸困難を引き起こし、場合によっては胸水が出てしまうことも。

抹消血液にまで出現すると、貧血や発熱が認められ、最悪の場合は敗血症などにも陥ります。最終的には、臓器破裂や腹膜への播種、黄疸など生命を脅かす重度な症状が出てしまう場合もあるでしょう。

抗がん剤を使用しない場合、これらの進行は抑えられないため、病気が急速に進行することがあります。複数の症状が同時に急速に出て、多臓器不全になる可能性もあります。

猫のリンパ腫治療で「ステロイドだけ」はどのようなケースで選択されるのか

以下のような場合に、猫のリンパ腫に対してステロイドの単独投与は有用であるとされています。

• 金銭面から十分な抗がん剤治療が行えない場合
• リンパ腫による食欲不振を改善させたい場合
• 抗がん剤は副作用が強くて使用できない場合

基本的には抗がん剤が優先されますが、場合によってはストロイドの単独投与が選択肢となってきます。

まとめ

猫のリンパ腫をステロイドだけで治療した場合の余命は数週間、長くても数ヶ月です。期待できる効果はあくまでも一時的な症状の緩和であるため、基本的にはステロイド単独ではなく、抗がん剤も合わせて使用します。

ただし、金銭面の問題や抗がん剤の副作用などを考慮し、ステロイドの単独投与が選択されるケースもあります。

猫のリンパ腫の治療に関して不安がある場合は、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績を誇る当院にご相談ください。