猫の消化器型リンパ腫は、猫のリンパ腫の中でもっとも多い腫瘍です。無治療だと1〜2ヶ月で命を落としてしまう可能性があるため、病気について正しく理解して早期に適切な治療を施すことが大切です。
この記事では、猫の消化器型リンパ腫とはどのような病気かを解説します。
猫のリンパ腫に関して少しでも不安に思うことがあれば、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績を誇る当院にご相談ください。腫瘍専門医による正確な診断のもと、延命につながる最善の治療を提案させていただきます。 |
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この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
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▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
猫の消化器型リンパ腫とは

リンパ腫は白血球のうちの一つであるリンパ球が腫瘍化して増殖する病気で、そのうち、消化管に発生するものを消化器型リンパ腫と言います。
消化器型リンパ腫は、猫の腸管に発生する腫瘍のうち55%を占めています。胃腸の中でも、小腸での発症が最も多いとされています。
さまざまな年齢で発症しますが、発症時の平均年齢は12〜13歳です。
病変は消化管の中に限定した腫瘤を形成するものもあれば、広範囲に広がっていくものもあります。また、腸管膜リンパ節や肝臓を巻き込んで発生することもあります。
なお消化器型リンパ腫は、大細胞性リンパ腫(高悪性度)と小細胞性リンパ腫(低悪性度)に分類されます。
猫のリンパ腫とはどのような病気か?についてはこちら
猫の消化器型リンパ腫で現れる症状

消化器型リンパ腫では、慢性的な下痢や嘔吐、食欲不振、体重減少など非特異的な(=他の多くの状態や疾患でもみられる)症状を示すことが多いです。一時的に症状が改善しても、また症状がぶり返してしまうこともあります。
症状が進行すると、腫瘍が消化管を塞いでしまって腸閉塞になったり、腫瘍の増殖にともなって弱くなった消化管が穿孔して腹膜炎を引き起こしたりする可能性もあります。
消化器型リンパ腫になった猫の生存率

高悪性度リンパ腫の場合
抗がん剤治療を行った場合、完全寛解と部分寛解をあわせた奏功率(効果が適切に現れる割合)は50%〜60%と言われています。
※寛解:病気による症状や検査異常がなるなった状態
低悪性度リンパ腫の場合
適切なタイミングで治療を開始できれば85%以上で症状の改善がみられ、良好な予後が得られるとされています。
猫のリンパ腫におけるステージについてはこちら
消化器型リンパ腫になった猫の余命

高悪性度リンパ腫の場合
高悪性度リンパ腫の場合、無治療での予後はおよそ1ヶ月程度と言われています。
抗がん剤治療を行った場合の予後は、75日〜100日程度とされています。
低悪性度リンパ腫の場合
低悪性度リンパ腫の場合は、無治療では1〜2ヶ月程度とされています。
適切な治療を行なうことで数ヶ月〜2年以上生存できることもあります。
悪性リンパ腫になった猫は長生きできる?についてはこちら
リンパ腫になった猫が死ぬ前に見せるサインについてはこちら
猫の消化器型リンパ腫は転移する?

リンパ腫は血液の腫瘍であるため、病変は局所にとどまらず、全身に転移してしまうことが多いです。具体的には、リンパ節や肺、肝臓、脾臓などの他の臓器へ転移することがあります。
転移した臓器によって呼吸困難や肝機能の低下など、さまざまな症状が新たに見られるようになります。
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猫の消化器型リンパ腫の原因

猫の消化器型リンパ腫の原因は、残念ながらまだはっきり分かってはいませんが、遺伝的要因や、慢性的な消化管の炎症などが発症に関与していると考えられています。
なお、猫のリンパ腫では猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスジェの感染が発症リスクを上げると言われていますが、消化器型リンパ腫ではこれらのウイルス感染が関与している可能性は低いと言われています。
猫の消化器型リンパ腫の検査・診断方法

猫の消化器型リンパ腫を疑う場合には、まずエコーを行います。腹部にエコーを当てて、腸の動きや肥厚、リンパ節の大きさ、腹腔内の腫瘍の有無などを確認します。
また、血液検査ではアルブミンの低下や軽度の貧血などがみられることがありますが、非特異的な(=他の多くの状態や疾患でもみられる)所見しか得られないことがほとんどのため、エコーや血液検査ではあくまでも「リンパ腫疑い」という判断になります。
エコーにてリンパ腫の疑いがあるとなった場合、内視鏡下で消化管の粘膜組織を採取して行う病理組織検査が最も信頼性の高い検査となります。ただし、内視鏡には全身麻酔が必要です。
一方、エコー下で腹腔内に腫瘤が認められる場合は、麻酔を必要としない細胞診で診断できることもあります。
ただ、消化管の肥厚が軽度の場合などは細胞診が不適応になってしまうため、リンパ腫の発生部位や発生の仕方、猫ちゃんの一般状態などに合わせて、適切な検査を選択していきます。
また細胞診や病理組織検査の他にも、免疫組織科学検査や遺伝子検査などを追加で行うことで診断の精度が上がることもあります。
猫の消化器型リンパ腫に対する抗がん剤治療の有効性

消化器型リンパ腫の治療は、進行度や猫ちゃんの全身状態によって異なりますが、抗がん剤での治療が一般的です。
高悪性度リンパ腫の場合、多数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法や、ロムスチンやニムスチンを単剤で投与する方法があります。
多剤併用療法には、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロンを組み合わせたCOPプロトコルや、これにドキソルビシンを加えたCHOPプロトコルなどがあります。
現状では、どのプロトコルが有用かは明確には判明していません。まずはCHOPプロトコルで治療を開始し、十分な治療効果が得られなかった場合に単剤による治療に移行するなどの方法をとることが一般的です。
猫のリンパ腫治療に使われる抗がん剤の効果についてはこちら
猫のリンパ腫治療に使う抗がん剤の費用相場についてはこちら
猫の消化器型リンパ腫に対する外科手術の有効性

猫の消化器型リンパ腫において外科手術が適応となるのは、限局性に腫瘤を形成するタイプです。その中でも消化管閉塞や消化管穿孔が生じている場合や、抗がん剤治療を行うことによって消化管穿孔が生じる可能性がある場合に外科手術を実施します。
手術は、発生部位などに応じて、腫瘍の近位側と遠位側の両方の正常組織をマージンとして数cmずつ確保しながら、腫瘍の発生している消化管を切除します。
化学療法に先立って外科手術を行った場合、生存期間中央値が400日まで延長したという報告がされています。
ただし、外科手術を行うことができる症例は病変が限局していて、そもそも消化器型リンパ腫の中でも治療反応が比較的良好な症例であるという可能性は考慮する必要があります。
猫の消化器型リンパ腫に対しては、正確な診断と確かな治療技術がある動物病院を選ぶことが重要です。
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猫の消化器型リンパ腫の目安治療費

症状の程度や治療期間、猫ちゃんの体重などによっても大きく変わりますが、検査や抗がん剤治療合わせて、50万〜100万程度となります。
当院における猫の消化器型リンパ腫の症例
〜他院で大細胞性リンパ腫(高悪性度)と診断された3歳の猫ちゃんの症例〜
当院ではエコー検査やレントゲンを行い、小腸壁の肥厚やリンパ節の腫大を認めました。
▼小腸壁の肥厚

▼空腸リンパ節の腫大

そこで、CHOP療法のUW25というプロトコルで抗がん剤治療を行いました。
抗がん剤治療中は血液検査やエコー検査を定期的に行い、抗がん剤の用量や種類を状態に合わせて変更していきました。
抗がん剤治療を終えた後も定期的に検査を行っていますが、発症から1年半経過した今も元気に過ごしてくれています。
猫の消化器型リンパ腫を未然に防ぐには

猫の消化器型リンパ腫の明確な予防法は残念ながら確立されていませんが、早期発見のために、年に1〜2回程度の健康診断を受けることをおすすめします。
慢性的に下痢や嘔吐が続いている場合や、食欲不振や体重減少などの症状がみられたら、早めに受診しましょう。日頃から食事量や体重などを記録しておくと、猫ちゃんの変化に早期に気付きやすくなります。
消化器型リンパ腫は特徴的な症状が出ないことが多いため、少しでも気になることがあればお気軽にご相談ください。当院には腫瘍専門医が在籍しており、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績があるため、正確な診断と適切な治療提案ができます。
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