猫のリンパ腫は悪性腫瘍に該当し、自然治癒することはなく、無治療だと1〜3ヶ月以内には亡くなってしまいます。どのような病気かを正しく理解することが、良好な予後へとつなげる第一歩です。
この記事では、猫の悪性リンパ腫とはどのような病気かを解説します。
リンパ腫を発症した猫を無治療で放置するとほぼ確実に亡くなってしまうため、早期発見・早期治療は何より大切です。少しでも不安に思うことがあれば、犬猫の腫瘍にて1000症例を超える治療実績を誇る当院にご相談ください。 |
腫瘍の疑いがあるなら
治療実績1,000件超え
腫瘍専門医が在籍
上池台動物病院へ
全国6院 お近くの病院を見る
東京都大田区上池台5丁目38−2
神奈川県横浜市南区永田台1−2
静岡県沼津市大岡900−3
愛知県名古屋市中区大須1丁目35−42
大阪府大阪市港区弁天1丁目4−9 第3柴田ビル 104
大阪府大阪市鶴見区放出東2丁目19-8
この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
-
▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
猫の悪性リンパ腫とは

猫の悪性リンパ腫とは、白血球のうちのリンパ球がガン化する病気です。高齢の猫で多く発生します。
また、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染していることが、リンパ腫発症のリスクを高めることがわかっています。若齢の猫でも、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染している場合、発症するケースが多いです。
リンパ腫には多中心型・縦隔型・消化器型・節外型と4つの分類があり、猫では消化器型が全体の70%を占めています。
悪性リンパ腫になった猫は長生きできる?についてはこちら
猫の悪性リンパ腫の種類と症状

猫の悪性リンパ腫には、以下のような種類があります。
リンパ腫の種類 | 発生する場所 | 症状 |
---|---|---|
縦隔型リンパ腫 | 胸腔の胸腺や縦隔リンパ節 | ・発咳 ・頻呼吸 ・呼吸困難 ・嘔吐 ・下痢 など |
消化器型リンパ腫 | 肝臓や腸などの消化器系 | ・嘔吐 ・下痢 ・食欲不振 ・体重減少 ・消化管閉塞 ・腹膜炎 など |
多中心型リンパ腫 | 全身のリンパ節 | ・元気や食欲の低下 ・呼吸状態の悪化 ・体重減少 など |
皮膚型リンパ腫 | 皮膚 | ・皮膚の発赤 ・皮膚からの出血 ・皮膚のただれ など |
鼻腔内リンパ腫 | 鼻腔 | ・鼻汁 ・鼻出血 ・顔面変形 ・流涙 ・くしゃみ など |
それぞれ解説していきます。
縦隔型リンパ腫
猫の縦隔型リンパ腫は、胸腔の胸腺や縦隔リンパ節に発生します。若齢の猫に多く見られ、発症する猫の半数以上は猫白血病ウイルスに感染していると想定されます。
<症状>
- 発咳
- 頻呼吸
- 呼吸困難
- 嘔吐
- 下痢
など
猫の縦隔型リンパ腫の詳細はこちら
消化器型リンパ腫
猫のリンパ腫でもっとも多いのが、消化器型リンパ腫です。肝臓や腸などの消化器系に腫瘍が発生した状態を指します。
さまざまな年齢で発症しますが、T細胞性およびB細胞性の場合では、12歳前後で発症するケースが多いです。
<症状>
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 体重減少
- 消化管閉塞
- 腹膜炎
など
多中心型リンパ腫
多中心型リンパ腫では、全身のリンパ節が腫瘍となり、腫れてしまいます。大きくなると触っただけで気づくこともありますが、症状が出ないこともあるので、気づきにくい病気です。
<症状>
- 元気・食欲の低下
- 呼吸状態の悪化
- 体重減少
など
皮膚型リンパ腫
猫の皮膚型リンパ腫は、皮膚に発生するリンパ腫です。発生率は5%以下と低いです。
口の中の粘膜に出ることもあります。皮膚の病気だと思っていたら、リンパ腫だったということもあります。
<症状>
- 皮膚の発赤
- 皮膚からの出血
- 皮膚のただれ
など
鼻腔内リンパ腫
猫の鼻腔内リンパ腫は、鼻腔に発生するリンパ腫です。鼻腔に発生する腫瘍は、腫瘍全体の1〜8.4%とされ、そのうちリンパ腫が26〜49%を占めます。発症年齢は8〜11歳と報告されていますが、若齢でも認められます。
<症状>
- 鼻汁
- 鼻出血
- 顔面変形
- 流涙
- くしゃみ
など
猫の鼻腔内リンパ腫の詳細はこちら
猫の悪性リンパ腫の末期症状

猫の悪性リンパ腫は末期になると、著しい食欲の低下や嘔吐・下痢による体重減少が起き、ひどい貧血が起きたり、呼吸状態が悪くなったりします。
そして、リンパ腫が全身に転移することで、命に関わる重篤な症状が出てきます。こうした症状が少しでも楽になるように、早期発見・早期治療のための健診や予防が大切です。
リンパ腫になった猫が死ぬ前に見せるサインについてはこちら
腫瘍の疑いがあるなら
治療実績1,000件超え
腫瘍専門医が在籍
上池台動物病院へ
全国6院 お近くの病院を見る
東京都大田区上池台5丁目38−2
神奈川県横浜市南区永田台1−2
静岡県沼津市大岡900−3
愛知県名古屋市中区大須1丁目35−42
大阪府大阪市港区弁天1丁目4−9 第3柴田ビル 104
大阪府大阪市鶴見区放出東2丁目19-8
猫が悪性リンパ腫を発症する原因

猫の悪性リンパ腫の発症原因は、はっきりとはわかっていません。
猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスの感染が発症の一要因であるのに加え、免疫力の低下やストレス、遺伝などさまざまな要因が重なり発症するといわれています。
猫の悪性リンパ腫の検査・診断方法

体にしこりがある場合には、針生検(組織の一部を採取して調べる検査)を行い、細胞の状態を確認します。
一部の細胞だけでは判断がつかないときは血液検査やレントゲン検査、超音波検査、場合によっては麻酔下でのCT検査が必要になることもあります。
猫の悪性リンパ腫の治療方法

猫の悪性リンパ腫では、以下のような治療が選択されます。
- 化学療法
- 外科療法
- 放射線療法
- 食事療法
それぞれ詳しく解説していきます。
化学療法
猫のリンパ腫の一般的な治療は、抗がん剤を使用した化学療法です。
いくつかの抗がん剤を組み合わせて使用することで、がん細胞が抗がん剤への耐性を持つことを防ぎ、高い治療効果を得やすくします。
外科療法
消化管閉塞が起こっている場合や深刻な貧血を起こしている場合は切除を行います。
また、外科療法を行った後に抗がん剤治療を検討する場合もあります。
放射線療法
リンパ球は放射線に対して感受性が高いことから、鼻腔内リンパ腫や、腫瘍による圧迫で呼吸困難や嚥下障害がある場合には、腫瘍を縮小させるために放射線療法を行うことがあります。
腫瘍を小さくさせた後に抗がん剤治療を検討する場合もあります。
食事療法
ガンを患った動物は栄養素の代謝に変化が起こるため、食べているのに痩せてしまいます。そのため、チューブを用いた栄養補給や強制給餌用のシリンジを使用して、食べる努力をしてもらう必要が出てきます。時に食欲増進剤を使用することもあります。
また、抗腫瘍効果のあるサプリメントを使用することで免疫力を高め、腫瘍細胞の増殖を抑えるようにします。
猫の悪性リンパ腫は治る?完治は難しい

基本的に悪性リンパ腫の完治は難しく、寛解を目指すことが目標です。
寛解とは、病気の症状が一時的に軽くなった状態や、症状や検査異常が消失した状態を言います。
とはいえ、治療に対する反応が乏しく、寛解率が低い(50〜70%)ため、治療をしても生存期間は半年〜9ヶ月と短いです。無治療の場合だと、1〜3ヶ月以内には亡くなってしまいます。
もちろん、治療をすることで症状が楽になる子や、1年以上生きる子もいます。治療をすること自体は、決して無駄ではありません。
猫のリンパ腫に対する緩和ケアについてはこちら
猫がどのような様子を見せたら悪性リンパ腫を疑うべき?

食欲不振や体重減少、嘔吐や下痢、くしゃみや鼻血、発作など、前述しているリンパ腫の型によって出てくる症状はさまざまです。素人では、他の病気との違いがわからないことも多いです。
どこか気になる症状や不安がある場合には、病院に来ていただくと良いでしょう。
腫瘍の疑いがあるなら
治療実績1,000件超え
腫瘍専門医が在籍
上池台動物病院へ
全国6院 お近くの病院を見る
東京都大田区上池台5丁目38−2
神奈川県横浜市南区永田台1−2
静岡県沼津市大岡900−3
愛知県名古屋市中区大須1丁目35−42
大阪府大阪市港区弁天1丁目4−9 第3柴田ビル 104
大阪府大阪市鶴見区放出東2丁目19-8
猫の悪性リンパ腫を予防するには

猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染すると、悪性リンパ腫の発症のリスクは上がってしまいます。
猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスへの感染を防ぐためには、感染している猫との濃厚接触やケンカを防ぐことが大切です。感染しないためにも、室内での飼育を徹底しましょう。
猫のリンパ腫治療に関する最新動向

猫の悪性リンパ腫の治療においては、もっとも一般的な治療法であるCOP療法や、これにドキソルビシンを追加したCHOP療法と呼ばれる方法が主に用いられています。
近年では、この治療に用いられている消化器毒性の強いビンクリスチンを使用していないVAPC療法についての研究がなされています。
猫のリンパ腫に関するよくある質問

リンパ腫を発症しやすい猫種はありますか?
4歳以下のシャム系の猫は、リンパ腫を発症しやすいとされています。
猫のオス・メスはリンパ腫の発症と関係しますか?
オスの方がより発症のリスクは高いです。
前縦隔型リンパ腫を発症した猫のうち、メス猫よりオス猫の方が約3倍多く発生していることが報告されています。
猫が急にご飯を食べなくなったらリンパ腫の予兆ですか?
食欲の低下はリンパ腫以外でも、口の痛みやその他疾病でも起きる場合があります。
一概にリンパ腫とはいえないので、気になる症状がありましたら一度ご来院ください。
猫のリンパ腫はステロイドだけでも治療できますか?
ステロイドで一時的な改善が期待できますが、やはりすぐに耐性ができてしまい、症状が出てきます。ステロイド単体ではなく、その他抗がん剤との併用で高い治療効果を目指すのが理想です。
リンパ腫になった愛猫の治療費がどうしても払えないのですが、してあげられることはありますか?
緩和ケアという形で、脱水状態や嘔吐・下痢、痛みを改善するためのケアを行うこと、あるいは抗腫瘍効果のあるサプリメントの服用を勧めます。
加えて動物病院では、食餌の与え方・介護の方法などをアドバイスさせていただきます。
まとめ

猫の悪性リンパ腫とは、白血球のうちのリンパ球がガン化する病気です。無治療の場合は1〜3ヶ月以内に亡くなってしまい、治療をしても生存期間は半年〜9ヶ月とされています。
しかし、早期に治療を開始することで、愛猫が健やかに過ごせる期間を延長できるのは事実です。何かしら異変が見られたときすぐに動物病院に連れていくことはもちろん、定期的な健診で体の状態をチェックすることも大切です。
少しでも不安に思うことがあれば、1000症例を超える治療実績を誇る当院にご相談ください。腫瘍専門医による的確な診断と治療判断が可能です。
腫瘍の疑いがあるなら
治療実績1,000件超え
腫瘍専門医が在籍
上池台動物病院へ
全国6院 お近くの病院を見る
東京都大田区上池台5丁目38−2
神奈川県横浜市南区永田台1−2
静岡県沼津市大岡900−3
愛知県名古屋市中区大須1丁目35−42
大阪府大阪市港区弁天1丁目4−9 第3柴田ビル 104
大阪府大阪市鶴見区放出東2丁目19-8