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犬の消化器型リンパ腫とは?原因や治療、余命について解説

犬の消化器型リンパ腫とは?原因や治療、余命について解説
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この記事の監修者

上野雅祐

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

▼略歴

  • 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
  • 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
  • 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
  • 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
  • 日本小動物がんセンター 研修医


▼所属学会・資格

 

犬の消化器型リンパ腫は、無治療の場合の余命は約1ヶ月、治療を実施しても中央生存値は2〜3ヶ月ほどと、死に直結しやすい病気です。

飼い主は消化器型リンパ腫についてしっかりと理解し、早期発見・早期治療に努めることが重要です。

この記事では、犬の消化器型リンパ腫とはどのような病気なのかを解説します。

消化器型リンパ腫の疑いがある、他院で治療を受けたが反応が悪かったという場合は、腫瘍認定医が在籍する当院までご相談ください。1000症例を超える治療実績をもとに、正確で迅速な検査と治療提案が可能です。

当院の腫瘍治療について

犬の消化器型リンパ腫とは?胃腸系に発生するリンパ腫

犬の消化器型リンパ腫

犬の消化器型リンパ腫とは、胃腸系に発生するリンパ腫です。通常は免疫機能の中心を担うリンパ球が、身体にとって悪な存在であるリンパ腫に転化し、増殖していきます。

犬の消化器型リンパ腫は、犬のリンパ腫の中で2番目に発生頻度が高い病型です。消化器型の定義は、胃腸管を中心に肝臓や膵臓に浸潤し、腸管膜リンパ節への腫瘍細胞の浸潤を伴うことです。

症状としては、食欲低下や元気消失といった非特異的な症状に加えて、慢性下痢や血便、嘔吐などが生じます。

治療を実施しても予後が悪いとされており、中央生存値は2〜3ヶ月ほどと、死に直結しやすい病気です。消化管のどの部分に腫瘍ができるかによっても予後は大きく変わります。

犬の消化器型リンパ腫で現れる症状

犬の消化器型リンパ腫で現れる症状
  • 慢性的な下痢、血便、嘔吐
  • 食欲不振 
  • 低アルブミン血症
  • 体重減少
  • 腹水(腹部膨満)

など

以上の一般的な症状に加えて、肝臓に転移した場合には肝数値の上昇や黄疸など、さまざまな症状を示す場合もあります。

消化器型リンパ腫になった犬の余命

消化器型リンパ腫になった犬の余命

消化器型リンパ腫は、多中心型リンパ腫に比べて予後が短くなる傾向にあります。

対応平均的な寿命
無治療約1ヶ月
ステロイド投薬のみ約1ヶ月
uw-25 CHOPプロトコール(一般的な抗がん剤)約3ヶ月
ロムスチン(ニムスチン)約5ヶ月

上記の治療に加えて、L-アスパラギナーゼなどの他の抗がん剤を症状に合わせて加える場合もあります。

なお、結直腸のリンパ腫の場合は、外科手術と抗がん剤で1500日程度生存できる可能性があります。

犬の消化器型リンパ腫の原因

犬の消化器型リンパ腫の原因

犬の消化器型リンパ腫は、はっきりとした原因がわかっていません

ただし、リンパ腫に限った話ではありませんが、一緒に暮らす人間の喫煙による呼吸器疾患の罹患率上昇、猫エイズ・白血病によるリンパ腫の罹患率上昇といったように、基礎疾患や普段の生活が大きく関係していることは間違いありません

犬の消化器型リンパ腫の診断方法

犬の消化器型リンパ腫の診断方法

犬の消化器型リンパ腫の診断は、一般身体検査(触診)や画像検査(レントゲン、エコー)、血液検査、細胞診検査、病理検査、特殊検査などさまざまな方法で行います。

診断方法内容
触診体表リンパ節の腫大があるかないかチェック
画像検査体内のリンパ節の腫大やそれぞれの臓器に画像上の異常がないかチェック
血液検査リンパ腫に関連した異常がないかチェック
細胞診検査、病理検査腫大したリンパ節や異常のある臓器に針を刺して細胞を取る検査
場合によっては外科手術をすることで病変部を切り取り、病理検査することもある
特殊検査診断や分類をより正確に行うための補助の検査
クローナリティー検査(PARR)、フローサイトメトリー(FCM)、免疫組織化学(IHC)が現在の特殊検査としては一般的

犬の消化器型リンパ腫の治療方法

犬の消化器型リンパ腫の治療方法

犬の消化器型リンパ腫は治療を実施しても予後が悪い(中央生存値2〜3ヶ月)とされていますが、寛解(症状がおさまり、再発しない状態が続くこと)を目指すために以下のような治療の選択肢があります。

  • 化学療法(抗がん剤)
  • 放射線療法
  • 外科療法(手術)

化学療法(抗がん剤)

犬の消化器型リンパ腫の治療は、抗がん剤が主な選択肢となります。

理由としては、

  • 抗がん剤に対する反応(治療成績)が非常に良い
  • 手術や放射線と違って麻酔を必要としない

ことが挙げられます。

犬のリンパ腫の治療に抗がん剤は、完治ではなく寛解を目指すため、人間の抗がん剤のように高用量で使用することはありません。そのため、想像よりも副作用は軽度で済むことが多いです。

とはいえ、抗がん剤の種類や個体差によっては副作用が強く出る場合もあるため、医師と十分に相談して決定する必要があります。

外科療法(手術)

犬の消化器型リンパ腫は血液の病気なので手術による完治は難しいものの、手術+抗がん剤、もしくは手術+放射線のように、他の治療と組み合わせてより寛解に近づける選択肢があります。

全ての場合で手術が必要なわけではありませんが、愛犬の状態に応じて手術が最善となるなら、手術も選択肢となるでしょう。

放射線療法

リンパ腫の種類や状態によっては、抗がん剤よりも放射線療法の方が反応が良い場合があります。ただし、放射線療法は麻酔が必要であり、かつ複数回実施する必要があるため、抗がん剤よりもハードルは高いです。

放射線機器の種類でも治療成績が左右されるため、選択する場合は実績のある施設を選ぶことが大切です。

当院における犬の消化器型リンパ腫の症例

当院における犬の消化器型リンパ腫の症例

当院における犬の消化器型リンパ腫の症例を紹介します。

<症状>

  • 治療に反応しない慢性的な下痢・血便
  • 食欲不振および体重減少
  • 低アルブミン血症による腹水

<検査>

  • 超音波検査
  • 腹水検査
  • 細胞診検査(エコーで異常な所見のある場所を針で刺して細胞を採取する)

<治療>

リンパ腫による消化器症状が強く、一般的な抗がん剤の副作用が出た場合に消化器症状がさらに悪化する可能性が予想されたため、ロムスチンとL-アスパラギナーゼによる治療を選択した。

また、慢性的な消化器症状により低コバラミン血症を併発していたため、ビタミン剤による是正も同時に行った。

<予後>

犬の消化器型リンパ腫は治療を行なっても中央生存値は2〜3ヶ月ほどとされていますが、この症例では半年間の生存期間を得ました。半年間頑張ってくれましたが、最終的には消化器症状の悪化と食欲不振により亡くなっています。

犬の消化器型リンパ腫を未然に防ぐには

犬の消化器型リンパ腫を未然に防ぐには

犬の消化器型リンパ腫は、普段の生活で予防することは難しいですが、早期発見・早期治療がもっとも大切だと考えます。

定期的な健康診断や、高齢犬の治らない下痢に対しては内視鏡検査を行うなどして、腫瘍の可能性を考えた治療や診察を行うことが重要です。

少しでも不安がある場合は、腫瘍認定医が在籍する当院にご相談ください。1000症例を超える治療実績をもとに、正確で迅速な検査と治療提案が可能です。

当院の腫瘍治療について

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