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コラム COLUMN

犬の後ろ足がおかしい…考えられる原因や痛がらないときでも注意すべきこと

更新日:2026年6月9日  公開日:2026年6月9日

犬の後ろ足がおかしい...考えられる原因や痛がらないときでも注意すべきこと

愛犬の後ろ足がおかしいと感じたとき、「様子を見ていて大丈夫なのか」「すぐに病院へ行くべきなのか」と不安になる飼い主さんは多いでしょう。

後ろ足の異変の原因は、骨折やパテラ(膝蓋骨脱臼)、前十字靭帯断裂などの関節トラブルから、椎間板ヘルニアなどの神経疾患まで多岐にわたります。痛がらなくても進行している病気もあるため、放置は禁物です。

この記事では、考えられる原因やすぐに受診すべき症状の見分け方、自宅での応急対応について解説します。

「愛犬の後ろ足がおかしい」という違和感を覚えた時点で、骨折・膝蓋骨脱臼(パテラ)・前十字靭帯断裂といったトラブルがすでに発生している可能性があります。不安に思うことがあれば、整形外科の治療実績が豊富な当院にご相談ください。

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この記事の監修者

上野雅祐

上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。

監修者情報

▼略歴

  • 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
  • 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
  • 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
  • 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
  • 日本小動物がんセンター 研修医


▼所属学会・資格

犬の後ろ足がおかしい原因:骨・関節のトラブル

犬の後ろ足がおかしい原因:骨・関節のトラブル

犬の後ろ足がおかしいとき、まず疑われるのが骨や関節に関するトラブルです。代表的な原因として、以下のようなものが挙げられます。

  • 骨折
  • 膝蓋骨脱臼(パテラ)
  • 前十字靭帯断裂
  • 関節炎・変形性関節症
  • 股関節形成不全

それぞれ詳しく見ていきましょう。

骨折

落下や交通事故などの後に、後ろ足を全くつけない・足が不自然な方向に曲がっているといった症状が見られたら、骨折の可能性があります。

犬の骨折は前脚(橈尺骨)に多い傾向がありますが、後ろ足でも大腿骨や脛骨の骨折は起こりえます。とくに小型犬はソファーからの飛び降りなど日常的な場面でも骨折するリスクがあるため注意が必要です。

骨折が疑われる場合は、患部をできるだけ動かさず、速やかに動物病院を受診しましょう。

犬の骨折の原因・症状・治療まとめ

膝蓋骨脱臼(パテラ)

パテラとは、膝のお皿(膝蓋骨)が本来の位置からずれてしまう病気です。トイプードルやチワワなどの小型犬に多く見られます。

典型的な症状は、散歩中にスキップするように片足を上げて歩き、数歩でまた元通りになるというものです。パテラにはグレード1〜4の段階があり、軽度では痛みを示さないことも多いため、飼い主が「一時的なもの」と見過ごしてしまうケースが少なくありません。

放置するとグレードが進行し、関節炎や骨の変形につながる可能性があります。歩き方に違和感がある場合は、早めに獣医師の診察を受けましょう。

犬のパテラとはどのような病気かの詳細はこちら

前十字靭帯断裂

前十字靭帯は膝関節を安定させる重要な靭帯で、これが断裂すると後ろ足に体重をかけられなくなります。人間ではスポーツ中の外傷で起こるイメージがありますが、犬の場合は加齢による靭帯の変性に肥満などの負荷が加わって徐々に断裂する「慢性型」がほとんどです。

中〜大型犬に多いとされますが、小型犬でもパテラを基礎疾患に持つ場合は発症リスクが高まります。さらに、片方の膝で発症した犬の40%前後が2年以内に反対側でも断裂する(※1、※2)とされており、早期の治療が重要です。

犬の前十字靭帯損傷(断裂)の原因・症状・治療まとめ

(※1)参考:Harasen G「Canine cranial cruciate ligament rupture in profile: 2002–2007Can Vet J, 2008
(※2)参考:Muir P et al.「Contralateral Cruciate Survival in Dogs with Unilateral Non-Contact Cranial Cruciate Ligament RupturePLOS ONE, 2011

関節炎・変形性関節症

関節炎・変形性関節症は、とくにシニア犬に多く見られる疾患です。朝起きたときや休憩後の動き始めにぎこちない歩き方をする、散歩を嫌がるようになったなど、症状が徐々に進行するのが特徴です。

パテラや前十字靭帯断裂などの病気を放置した結果、二次的に関節炎を引き起こすケースも少なくありません。「年のせい」と決めつけず、歩き方がおかしいと感じたら一度診察を受けることをおすすめします。

股関節形成不全

股関節形成不全は、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーなど大型犬に多い先天性の疾患です。股関節の骨の形が正常に発達せず、関節が不安定になることで症状が現れます。

腰を左右に振るように歩く「モンローウォーク」や、両方の後ろ足を同時に蹴り出す「うさぎ跳び」のような走り方が典型的なサインです。成長期に症状が顕在化しやすく、肥満は悪化要因になります。

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犬の後ろ足がおかしい原因:神経・脊椎のトラブル

犬の後ろ足がおかしい原因:神経・脊椎のトラブル

犬の後ろ足の異変は、骨や関節だけでなく神経や脊椎の問題が原因で起こることもあります。主に以下の疾患が考えられます。

  • 椎間板ヘルニア
  • 変性性脊髄症(DM)
  • 末梢神経障害

それぞれ詳しく見ていきましょう。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出して脊髄を圧迫する病気です。ミニチュア・ダックスフンドやフレンチ・ブルドッグなど、胴が長く足が短い犬種に多い傾向があります。

後肢のふらつきから始まり、重度の場合は後ろ足が完全に動かなくなることもあります。突然の発症が多く、とくに重症例では48時間以内の治療開始が回復を大きく左右するといわれているため、「急に後ろ足がふらつき始めた」という場合は早急な受診が必要です。

変性性脊髄症(DM)

変性性脊髄症(DM)は、ウェルシュ・コーギーやジャーマン・シェパードなどに多く見られる進行性の神経疾患です。痛みを伴わないまま後ろ足の麻痺がゆっくりと進行するのが特徴で、初期には足先が裏返ったまま歩く「ナックリング」や、歩行時に爪が地面を擦る音が確認されます。

残念ながら現時点で根治治療はなく、リハビリや理学療法で進行を遅らせる対応が中心となります。発症年齢は8歳以上が多い(※1、※2)とされています。

(※1)参考:Awano T et al.「Genome-wide association analysis reveals a SOD1 mutation in canine degenerative myelopathy that resembles amyotrophic lateral sclerosisPNAS, 2009
(※2)参考:Cornell University College of Veterinary Medicine「Degenerative Myelopathy 

末梢神経障害

末梢神経障害は、外傷や腫瘍による神経の圧迫などが原因で起こります。脊椎の病気と異なり、後ろ足の一部分だけに症状が出ることがあるのが特徴です。

たとえば、片方の後ろ足の先だけ感覚が鈍い、特定の筋肉だけが痩せてきたといったケースが該当します。症状は徐々に進行するため、変化に気づきにくい場合がありますが、筋肉量の左右差など見た目の変化にも注意しましょう。

犬の後ろ足がおかしい原因:内科的な病気

犬の後ろ足がおかしい原因:内科的な病気

骨・関節や神経のトラブル以外にも、内科的な病気が後ろ足の異変として現れることがあります。代表的なものを以下にまとめます。

疾患名主な症状緊急度
血栓塞栓症(大動脈血栓塞栓症)突然の後肢麻痺・足先の冷感・強い痛み極めて高い
感染症・炎症性疾患(ライム病、免疫介在性多発性関節炎など)関節の腫れ・痛み・跛行・発熱高い
全身状態の悪化(重度の貧血・内臓疾患など)ふらつき・後肢の脱力・元気消失状態による

とくに血栓塞栓症は、前触れなく突然後ろ足が動かなくなるケースがあり、猫に多い病気として知られていますが犬でも発症します。足先を触ると冷たく、強い痛みを伴うことが多いため、このような症状が見られた場合は一刻も早く動物病院を受診してください。

また、重度の貧血や腎不全などの内臓疾患でも全身の筋力が低下し、後ろ足がふらつくことがあります。後ろ足の異変と同時に食欲不振や元気消失が見られる場合は、内科的な病気が隠れている可能性も考えられます。

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犬の後ろ足がおかしいのに痛がらない…様子見でも大丈夫?

犬の後ろ足がおかしいのに痛がらない…様子見でも大丈夫?

「後ろ足をかばって歩くけど、痛がる様子はない」という場合でも、安易に様子見をするのは危険です。

犬はもともと痛みを隠す習性がある動物です。野生の本能として、弱っている姿を見せないようにするため、実際には痛みがあっても平気なふりをしていることがあります。そのため「痛がらない=問題がない」とは言い切れません。

また、病気の種類によっては、そもそも痛みを伴わないまま進行するものがあります。

  • パテラ(グレード1〜2):脱臼しても痛みを示さないことが多く、飼い主が気づかないうちにグレードが進行するケースがある
  • 変性性脊髄症(DM):痛覚を伴わずに後肢の麻痺がゆっくり進行する神経疾患
  • 初期の前十字靭帯の部分断裂:わずかな跛行のみで痛みを見せない場合がある

痛がらなくても、スキップのような歩き方が繰り返される、後ろ足を引きずる、足先の爪が擦り減っているなどの変化が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

犬の後ろ足がおかしいときにすぐ病院へ行くべき症状

犬の後ろ足がおかしいと感じても、飼い主がその場で原因を特定することは困難です。ただし、以下のような症状が見られる場合は緊急性が高いため、できるだけ早く動物病院を受診してください。

  • 後ろ足を全くつけない、または触ると激しく痛がる(骨折・靭帯断裂の可能性)
  • 突然両方の後ろ足が動かなくなった(椎間板ヘルニア・血栓塞栓症の可能性)
  • 足先が冷たくなっている(血栓塞栓症の可能性)
  • 後ろ足の異変と同時に、嘔吐・下痢・元気消失などの全身症状がある
  • 24時間以上改善しない跛行、もしくは日に日に悪化している

とくに「突然の両後肢麻痺」と「足先の冷感」は、命に関わる緊急サインです。夜間であっても対応可能な救急病院への受診を検討しましょう。

一方で、一瞬だけ足を上げてすぐ元通りに歩くような軽度の症状であっても、繰り返し見られるようであれば放置しないことが大切です。

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犬の後ろ足がおかしいときに自宅でできる応急対応

後ろ足の異変に気づいたとき、もっとも大切なのは安静にさせることです。ケージやサークルに入れて動きを制限し、患部に余計な負荷がかからないようにしてください。痛がっている場合でも、むやみに触ったりマッサージをしたりするのは避けましょう。状態を悪化させるだけでなく、痛みから噛みつかれるリスクもあります。

病院への搬送は、段ボールやキャリーケースに入れて全身をなるべく動かさずに運ぶのが安全です。とくに骨折やヘルニアが疑われる場合は、抱き上げる際に患部が動いてしまうと悪化する恐れがあるため、体を平らに保った状態で運べるよう工夫しましょう。

犬の後ろ足がおかしいときに動物病院で行われる検査方法

「犬の後ろ足がおかしいとき」という理由で動物病院を受診すると、原因を特定するためにさまざまな検査が行われます。主な検査方法は以下の通りです。

  • 触診・歩行検査
  • レントゲン検査
  • CT・MRI検査

それぞれ詳しく見ていきましょう。

触診・歩行検査

まず行われるのが、獣医師による触診と歩行の観察です。関節の可動域や痛みの反応、膝蓋骨の脱臼の有無などを手で確認します。前十字靭帯断裂が疑われる場合は、脛骨の前方への動き(ドロワーサイン)を調べる専用の検査も実施されます。

来院時は緊張して普段通りの歩き方をしないこともあるため、自宅での歩行の様子を動画で撮影しておくと診察に役立ちます。

レントゲン検査

レントゲン検査は、骨折・脱臼・関節の変形・骨腫瘍などを画像で確認する基本的な検査です。関節炎の進行度合いや、股関節形成不全の診断にも用いられます。

正確な撮影のために、痛みが強い場合や動いてしまう場合には鎮静処置が必要になることもあります。

CT・MRI検査

レントゲンだけでは判断が難しい神経や脊髄の病気が疑われる場合は、CT・MRI検査が行われます。たとえば椎間板ヘルニアでは、MRIによって脊髄の圧迫箇所や程度を正確に把握することが可能です。

CT・MRI検査は全身麻酔が必要になるため、事前に血液検査で麻酔に耐えられる状態かを確認したうえで実施されます。

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犬の後ろ足のトラブルを予防するには

犬の後ろ足のトラブルを予防するには

後ろ足のトラブルは、日常生活の中での工夫で予防できるものも少なくありません。以下のポイントを意識しましょう。

  • 滑りにくい床環境を整える
  • 適正体重を維持する
  • 適度な運動で筋力を維持する
  • シニア期は定期的な健康診断を受ける

それぞれ詳しく見ていきましょう。

滑りにくい床環境を整える

フローリングの床は犬にとって滑りやすく、膝や股関節に大きな負担がかかります。マットやカーペットを敷くことで、着地時の衝撃を和らげることができます。

あわせて、肉球周りの毛が伸びていると滑りやすくなるため、定期的にカットしておくことも効果的です。

適正体重を維持する

肥満は関節疾患や靭帯損傷の最大のリスク因子です。体重が増えるほど膝や股関節にかかる負荷が大きくなり、パテラや前十字靭帯断裂の発症・悪化につながります。

総合栄養食を基本としたバランスの良い食事を心がけ、おやつの量にも気を配りましょう。適正体重がわからない場合は、かかりつけの動物病院で相談すると安心です。

適度な運動で筋力を維持する

筋肉は関節を支える重要な役割を担っています。日常の散歩を習慣にすることで、後ろ足の筋力を維持し、関節への負担を軽減することができます。

ただし、激しい運動や高い場所からのジャンプは逆に関節や靭帯を傷める原因になるため注意が必要です。とくにパテラの傾向がある犬は、急な方向転換を伴う遊びを控えるなどの配慮が大切です。

シニア期は定期的な健康診断を受ける

加齢に伴い、関節炎や脊椎の変化はどの犬にも起こりえます。年に1〜2回の健康診断を受けることで、症状が出る前の段階で異常を発見できる可能性が高まります。

また、日頃から愛犬の歩き方を観察し、変化を感じたら動画を撮っておく習慣をつけると、獣医師への相談時にも役立ちます。

まとめ

犬の後ろ足の異変には、骨折・パテラ・前十字靭帯断裂などの骨・関節トラブルから、椎間板ヘルニアや変性性脊髄症といった神経疾患、さらには血栓塞栓症などの内科的な病気まで、さまざまな原因が考えられます。

「突然起こったのか、徐々に進行したのか」「痛みがあるかどうか」を観察することで緊急度を見極める手がかりになりますが、痛がらない場合でも深刻な病気が隠れていることがあります。

愛犬の後ろ足に少しでも異変を感じたら、自己判断で様子を見続けず、早めに動物病院を受診することが大切です。

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