犬のリンパ腫は、ステロイド単独で寛解は目指せないとされています。
しかし、抗がん剤の副作用が強くて耐えられない、費用面の負担が大き過ぎるといった事情から、ステロイド単独での治療が選択されるケースは珍しくありません。
この記事では、犬のリンパ腫に対するステロイドの効果や、ステロイド治療を選択した場合の費用について解説します。
犬のリンパ腫に対してステロイドの使用を検討している場合は、当院にご相談ください。当院には、リンパ腫の治療実績が豊富な腫瘍専門医が在籍しています。ステロイドという選択が最善かどうかも含めて、まずは愛犬の様子を診させてください。 |
当院の腫瘍治療について
この記事の監修者

上野雅祐
上池台動物病院の院長を務める。海外でのセミナーや国際学会、海外大学への短期留学などでジャンルに囚われない幅広いスキルを磨き、外科・腫瘍・皮膚等の専門的で総合的な治療を提供する。
- 監修者情報
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▼略歴
- 麻布大学 獣医学科卒業(学業成績優秀者)
- 千葉県 中核の動物病院にて勤務医
- 神奈川県 外科認定医・整形専門病院にて勤務医
- 専門病院にて一般外科・整形外科に従事
- 日本小動物がんセンター 研修医
▼所属学会・資格- 日本獣医がん学会
- 日本獣医画像診断学会
- 日本小動物歯科研究会
- 日本獣医麻酔外科学会
- 日本獣医循環器学会
- 日本獣医皮膚科学会
- 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
- ヒルズ栄養学コース修了
- Royal Canin Canine and Feline Clinical Nutrition Course修了
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル2
- 日本小動物歯科研究会 歯科レベル4
目次
犬のリンパ腫に対するステロイドの効果

犬のリンパ腫に対してステロイドは、リンパ球を傷害することで、腫瘍の大きさを縮小したり、腫瘍の周囲の炎症を抑えたりすることができます。これにより、腫瘍による圧迫や浮腫などを改善する、いわゆる抗腫瘍効果が期待できます。
本来ステロイドは抗炎症薬・免疫抑制薬であり、細胞質内のステロイド受容体に結合することで活性化され、さまざまな効果を発揮します。
また、食欲増進効果もあるため、リンパ腫の影響で食欲が落ちてしまった場合にも効果があるといわれています。
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犬のリンパ腫はステロイド単独で寛解を目指せる?

ほとんどの犬のリンパ腫において、ステロイド単独では寛解しません。
※寛解:症状が一時的、または永続的に軽減・消滅すること
低グレードのリンパ腫であれば、ステロイドのみで治療を行い続けることは可能であり、1〜2年程頑張ってくれるわんちゃんもいます。しかしこの場合も、寛解することは基本的にはありません。
犬のリンパ腫治療におけるステロイドの位置付け

犬のリンパ腫治療には、抗がん剤が広く用いられています。
しかし、抗がん剤は副作用として正常細胞にも影響を与えるほか、骨髄抑制により感染症にかかりやすくなったり、貧血を起こしやすくなったりする場合もあります。また、高額な治療費がかかってしまうことも否めません。
- 抗がん剤の副作用が強く出てしまい、化学療法を断念せざるを得ない
- 金銭的な問題から抗がん剤での治療継続が難しい
このような事情から、ステロイド単独での治療を受けているわんちゃんも少なくはありません。
しかし前述の通り、残念ながらステロイド単独での寛解は不可能です。あくまで、どうしても抗がん剤が選択できない状態で、少しでも延命につなげたいときの選択肢といえます。
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犬のリンパ腫をステロイド単独で治療した場合の余命

犬のリンパ腫はステロイドのみでの治療だと、余命は約1〜2ヶ月程となることが多いです。
これに対して無治療の場合、ステージや悪性度にもよりますが、大体1ヶ月前後で亡くなってしまいます。ステロイドを用いることで状態の緩和や縮小は見込めるものの、大幅な余命延長は期待できません。
なお、抗がん剤とステロイドを併用していくことで、約1年前後の余命が見込める可能性があります。
犬のリンパ腫治療に使うステロイドの目安費用

犬のリンパ腫治療にステロイドを用いる場合、飲み薬での治療になりますので、費用は高くても数千円に収まります。抗がん剤とは異なり、薬の代金や処方代、分包にしか費用がかかりません。
犬のリンパ腫治療でステロイドを使った場合の副作用

ステロイドは決められた正しい容量を短期間で使用する場合、副作用のリスクは小さいとされています。
しかし、高容量を長期服用することで、以下のような副作用が生じることもあります。
- 多飲多尿
- 消化器の潰瘍
- 肝臓への障害
- 糖尿病リスクの増加
- 高脂血症
- 創傷治癒の遅延
ステロイドは免疫抑制剤なので、免疫が長期に抑制された結果、二次的な感染が起こる可能性があり、ダニや細菌による感染症、真菌感染症、尿路感染症に陥るケースも存在します。
どれくらいの用量をどれくらい投与し続けるかは、獣医師とよく話し合って決定しましょう。
まとめ

犬のリンパ腫に対してステロイドは、単独で寛解は目指せないものの、腫瘍による圧迫や浮腫などを改善する効果が見込めます。抗がん剤の副作用が強くて耐えられない、費用面の負担が大き過ぎるといった事情がある場合は、一つの選択肢となるでしょう。
犬のリンパ腫に対してステロイドの使用を検討している場合は、当院にご相談ください。腫瘍専門医による精度の高い検査・診察を実施し、ステロイドを選択すべきかどうかも含めて最善の提案をさせていただきます。
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