「猫の乳腺腫瘍の進行速度はどれくらい?」
「放置していたらどんどん大きくなる」
このような不安を抱えていませんか?
この記事では、猫の乳腺腫瘍の進行速度について解説しています。
結論からいうと、猫の乳腺腫瘍の進行速度にはさまざまなパターンがありますが、いずれにせよ発覚した時点での早期治療が望ましいです。 少しでも愛猫の様子に不安や違和感があるなら、腫瘍認定ドクターが在籍する当院までご相談ください。 |
当院の腫瘍治療について
目次
猫の乳腺腫瘍の進行速度はどれくらい?一概には決まらない
猫の乳腺腫瘍の85〜95%が悪性であり、進行速度にはさまざまなパターンがあります。
進行速度を決める要因には、
- 腫瘍のサイズ
- 組織学的グレード(グレード三段階)
- リンパ節転移
などが挙げられます。
悪性腫瘍であってもサイズが小さく、緩やかに進行し、リンパ節転移も起こさない緩やかな挙動を示すこともあります。
一方、腫瘍が急激に大きくなり、リンパ節や他臓器への転移をするような非常に攻撃的な挙動を示すこともあります。
▼関連記事
猫の乳腺腫瘍(乳がん)とは?症状や治療について【画像あり】
猫の乳腺腫瘍は進行速度・度合いによってステージ分けされる
猫の乳腺腫瘍がどれだけ進行しているかを予想するには、腫瘍のサイズがもっとも重要な因子とされています。
腫瘍のサイズや転移の有無に基づき、そのステージはⅠ〜Ⅳの4段階に分類されます(TNM分類)。
※先述の「組織学的グレード」とは別物
それぞれのステージについてみていきましょう。
ステージⅠ
猫の乳腺腫瘍のもっとも初期のステージで、以下の状態が該当します。
- 腫瘍の直径が2cm未満
- リンパ節への転移がない
このステージで腫瘍を発見し、正しい治療を実施できれば、余命は36ヶ月以上といわれています。
▼関連記事
猫の乳腺腫瘍における良性とは?確率や正しい措置について解説
ステージⅡ
以下の状態が、ステージⅡに該当します
- 腫瘍の直径が2~3cm程度
- リンパ節への転移がない
他臓器への転移率はステージⅠより上がっており、余命は15〜24ヶ月です。
ステージⅢ
ステージⅢは2つのパターンに分類されます。
パターン1
- 腫瘍の直径が3cm以上
- リンパ節への転移がない
パターン2
- 腫瘍の直径が3cm未満
- リンパ節への転移がある
腫瘍の直径が3cmを超えると、予後が良くないと言われています。しかし、腫瘍の直径が3cm未満でも、リンパ節転移の有無や組織学的グレードによっては、寿命が短くなる場合もあります。
ステージⅢの予後は4〜12ヶ月、平均生存期間は9ヶ月といわれています。
ステージⅣ
以下の状態がステージⅣ、いわゆる末期ステージに該当します。
- 腫瘍の直径が3cm以上
- リンパ節や他の臓器への転移がある
この段階に至ると、平均生存期間は1ヶ月とされています。
▼関連記事
猫の乳腺腫瘍を手術しない場合の余命は?自然治癒の可能性についても解説
猫の乳腺腫瘍の進行速度を遅くするには?現状は外科手術で切除するしかない
現状では、猫の乳腺腫瘍の進行速度を大きく緩める方法はありません。
基本的には、状態にかかわらず外科手術による切除が推奨されます。
内科治療には化学療法、ホルモン療法、分子標的薬が存在しますが、基本的にこれらの全てが外科手術を行ったことを前提とした補助療法です。
なお、24ヶ月齢までに避妊手術を受けることで、将来の乳腺腫瘍のリスクを低下させることはできます。
▼関連記事
乳腺腫瘍になった猫は長生きできる?残された寿命や延命方法について
猫の乳腺腫瘍の進行速度が急に早くなるケースはある?
予後因子である腫瘍サイズ、リンパ節転移の有無、組織学的グレードが悪性であればあるほど、乳腺腫瘍の進行速度が急に早まるケースはあります。
猫の乳腺腫瘍は一定の進行速度で進んでいくものではないため注意が必要です。
猫の乳腺腫瘍の進行速度を確認するための検査
猫の乳腺腫瘍の進行速度を確認するうえで、もっとも簡単かつ重要なのが、腫瘍のサイズを確認することです。腫瘍のサイズを調べることで、ある程度の予後を確認できます。
リンパ節転移や他臓器転移は、画像検査で確認できます。しかし、肉眼的に明らかな異常がない場合でも、転移しているケースはあるため解釈には注意が必要です。
組織学的グレード(悪性度)に関しては針を刺す検査で分かることもあるかもしれませんが、基本的には外科手術により病変を摘出することで正しく判断ができます。
猫の乳腺腫瘍は進行速度にかかわらず手術が推奨される
猫の乳腺腫瘍は進行速度にかかわらず、早期診断を行い、早期の外科治療を行うことがもっとも大切です。
なぜなら、小さな腫瘍であっても無治療の場合は進行に伴い、
- 腫瘍サイズの増大
- 腫瘍の自壊による痛みや生活水準の低下
- リンパ節・他臓器への転移
などが高確率で起こるからです。
手術方法には両側全切除、片側全切除、部分切除があります。外科手術および術後の補助治療を行うことで、予後を改善することができると報告されています。
両側全切除→片側全切除→部分切除の順に術後の予後が悪いという報告がありますので、部分切除ではなく積極的な切除が推奨されます。
しかし、両側全切除の場合は合併症のリスクが上昇するため、最近では片側全切除を2回行うことが最良とする意見が多いです。
予後についてはさまざまな報告があるため一概にはいえませんが、外科手術単体を行った際の無増悪性生存期間(手術をしてから腫瘍の影響を受けることなく元気にしている期間)は300〜550日といわれています。
さらに、術後の補助治療を行った場合にはその期間が600〜700日といわれています。
論文などの報告にはないですが、乳腺腫瘍が数ミリくらいのごく小さい段階で手術を行った場合には、長期生存し完治が見込めている猫ちゃんもいます。
そのため、進行速度にかかわらずできるだけ早期に診断・治療することが望ましいです。
まとめ
猫の乳腺腫瘍の進行速度を決める要因には、以下のようなものが挙げられます。
- 腫瘍のサイズ
- 組織学的グレード(グレード三段階)
- リンパ節転移
進行速度にかかわらず、少しでも早く治療することが予後を左右します。
なお当院には、猫の乳腺腫瘍において数多くの治療実績があります。腫瘍認定ドクターが在籍しており精度の高い検査・治療が可能なので、ぜひご相談ください。
当院の腫瘍治療について